Quantcast
Channel: レバウェル介護 介護職向けお役立ち情報(旧 きらッコノート)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 642

帰宅願望に効果的な声かけとは?認知症の方への対応方法について解説

$
0
0
車いすのシニア女性に手を重ねる女性介護スタッフのイメージ

この記事のまとめ

「帰宅願望の対応が難しい」「利用者さんをさらに不穏にさせてしまう」など、日々介護施設での仕事をしていく中で、このような悩みを抱えている介護職員もいるのではないでしょうか?

本記事では、帰宅願望とは何か?という基礎的なポイントをおさらいし、適切な対応と声かけを解説します。対応と声かけの具体的な事例紹介もしていますので、本記事で学んだことを、介護現場で活用していただければ幸いです。

帰宅願望とは?認知症の症状の1つ

帰宅願望とは「帰りたい」という旨の訴えを繰り返したり、荷物をまとめて出口を探したりといった、帰宅につながる行動をとることを指します。認知症などにより、状況判断が難しい場合や見当識に障害が生じている場合にみられることの多い行動の1つです。
帰宅願望は、一見すると問題行動であるかのように感じられる方もいるかもしれません。しかし、帰宅願望自体は「悪いもの」ではないのです。

帰宅願望は問題行動ではない

介護職として、認知症の方の対応に追われるなかで帰宅願望を「うざい」「面倒」「しつこい」と感じることもあるでしょう。しかし対応が大変だからといって、帰宅願望とそれに付随する行動を「問題行動」と決めつけてしまうのはNGです。

帰宅願望は、慣れない場所に不安になり、親しい人たちの元に帰りたい・戻りたいという気持ちから生じるもの。この「不安」や「安心したい」という気持ちは、高齢者や認知症特有の感情の変化ではありません。私たちでも、初めての場所や知らない人たちに囲まれれば、居心地の悪さや不安を感じることはあるはずです。

誰もが感じる心情の変化が、行動や言動に表れているだけであり「問題行動を起こしているわけではない」との認識を忘れないようにしましょう。

▼関連記事
介護の現場で役に立つアンガーマネジメントとは?トレーニング方法を解説!

帰宅したい理由に合わせた対応が重要

帰宅願望が出現するきっかけは、利用者さんの過去の習慣や性格などにより異なります。利用者さんとコミュニケーションを取りながら、帰りたい理由や気持ちの変化を確認してみることも重要です。会話のなかで、帰りたい気持ちやその原因を本人に直接確認したり、汲み取ったりすることで、利用者さんに合わせた声かけや対応がしやすくなります。

利用者さんの気持ちに寄り添って不安を軽減し、穏やかな気持ちになってもらうことや帰宅願望の頻度を減らし、施設で安心できる時間を増やすことを目指してケアを行っていきましょう。

登録は1分で終わります!

アドバイザーに相談する(無料)

帰宅願望の原因は「不安」

帰宅願望の原因や出現しやすい時間帯などはありますが、どの状況で帰宅願望が出現したとしても、その根底にあるのは「不安」です。利用者さんにとって、不安が大きくなりやすい傾向にあるのは、どういうときなのか、何が原因として考えられるのかを解説します。

原因① 認知症の記憶障害や見当識障害

介護現場で最も多く見られるのは、認知症の利用者さんに帰宅願望が出現する場面です。
認知症は、時間や状況を正しく理解することが難しいため、不安な気持ちを感じやすいのです。

原因② 夕暮れ症候群

夕暮れ症候群とは、夕方の時間帯にかけて不安感が強くなり、徘徊や興奮、易怒性などが強く出てしまう状態を指します。見当識に障害がある認知症の利用者さんなどに多く見られ、「家に帰ってご飯を作る」「子供を迎えに行く」「会社に行く」などさまざまな理由で家に帰りたがったり、施設の外に出ようとしたりします。

原因③ 安心して過ごせない施設環境

帰宅願望の要因の1つとして、居心地の悪さが挙げられると解説しましたが、利用者さんが過ごす環境が原因で帰宅願望に繋がることもあります。
人が多く行き来する時間帯や施設に入所した初日、居室の移動があったときなど環境の変化があるときは、特に帰宅願望が出やすくなります。

帰宅願望に対する効果的な声かけ

さまざまな状況で出現する可能性のある帰宅願望ですが、介護職員の声かけ次第で落ち着くこともしばしば。逆に、誤った声かけをしてしまうと、さらに強い拒否や介護抵抗に繋がることもあります。

帰宅願望が出現したときは「帰れませんよ」などと、いきなり否定をすることは絶対に避けましょう。不安や混乱が増幅してしまう可能性が非常に高まってしまいます。まずは傾聴が基本。会話の中で理由や気持ちを聞きだし、それに応じて、安心できる声かけを心がけましょう。

効果的な声かけの具体例を、後ほどご紹介します。

▼関連記事
海外の認知症ケアはどんなもの?日本の介護に取り入れられる考え方を紹介!

帰宅願望の対応のコツ

帰宅願望の対応として5つのポイントを解説します。NGな対応も合わせて紹介しますので、普段の対応を振り返りながら、確認してみましょう。

施設の環境を見直す

過ごしている環境に不安を感じる要因がないかを確認するのはとても大切です。居室の場所を分かりやすくしたり、食席の席順を再検討したり、さまざまな工夫が可能です。
例えば、居室の場所が死角になっていたり、静かな環境を好む利用者さんの近くに大きな声で話す利用者さんが居たりする場合は、環境調整を行うと穏やかに過ごせる時間が増えるかもしれません。

本人を否定しない

帰宅願望の対応で、否定から入るのは絶対にNGです。否定は不安の増幅に繋がり、更なる不穏を引き起こします。傾聴し寄り添った対応が、その後のケアをスムーズにします。

興味を帰宅願望から別のことにそらす

不安な気持ちを軽減させる対応として、ほかのことに意識を集中させるというのも有効です。例えば、一緒にフロア内を歩きながら全く別の話題を出して会話を広げ、楽しい気持ちになってもらうこともできます。利用者さんの気持ちを「不安」から別の何かに変えるきっかけを作ることで、帰宅願望が軽減しやすくなります。

介護者の都合で利用者さんの行動を制限しない

利用者さんの行動を制限するのも帰宅願望がさらに強くなってしまうので注意しましょう
限られた時間の中で帰宅願望の対応をするのは非常に大変です。「そっちに行かないでください」「ここにいてください」など無意識に利用者さんの行動を制限していないか、一度振り返ってみてもいいかもしれません。

嘘やごまかしのない誠実な対応で信頼を得る

認知症の程度と状況によっては「嘘も方便」になる場合もありますが、いい加減な嘘は信頼を失う危険性があります。誠実に対応することで信頼を獲得でき、利用者さんに安心感を与えることができます。

帰宅願望が出現した時の対応と声かけの具体例

帰宅願望が出現した時の対応と声かけについて、事例を挙げながらより具体的に解説していきます。上記の解説を踏まえて、具体的にどのような対応や声かけをすれば良いのか、考えながら読み進めてみてください。

事例① グループホーム入所初日のAさんへの対応と声かけ

自宅から、グループホームに入所したAさん。そわそわと落ち着かず、介護職員に「帰ります。お世話になりました。」と何度も訴えます。自分の居室も分からず、フロアをうろうろと行き来している様子も見られました。

この場合、帰宅願望出現の主な要因は自分の居場所が分からないことからくる不安だと考えられます。そして、Aさんへの対応として適切なのは「ここはAさんの居場所」だと分かってもらうこと。さらに、居心地の良い場所だと感じてもらうことができればベストです。

居室や食席の場所に案内したり、一緒にリビングを歩いたりしながら「今日はここに泊まってみませんか?」と問いかけてみるのもいいかもしれません。

入所初日は不安も強いと予想されるため、いきなり「もう自宅には戻りませんよ」と否定的な表現で現実を突きつけるような対応はNGです。不安な気持ちをくみ取って、利用者さんが安心できる言葉選びを心がけましょう。

事例② 特養で生活しているBさんへの対応と声かけ

特養で生活をしているBさんは、3人の子どもを育て、70歳まで清掃の仕事をしていた経歴がある女性の利用者さんです。夕方になると多動になり、険しい表情で拒否的な言動が見られることが多い様子。夕暮れ症候群に伴って帰宅願望も出現し、「仕事にいく」「買い物にいく」などの発言が見られます。

Bさんへの対応のポイントは、本人の世界観を否定しないこと。「どこにお勤めなんですか?」や「今日の夕飯は何にしましょうか?」など、本人の世界観をなるべく崩さず、話を進めるのが効果的です。

本人の話を聞きながら、否定や拒否的言動がなくなってきたタイミングで、いつもの食席に誘導したり「遅くなりそうだから、ご飯食べていきませんか?」などの声かけをしながら、夕食に繋げたりすると、その後のケアがスムーズです。

見当識障害がある場合、本人の世界観を否定せずに次のケアに繋げることが大切。「こんな時間に仕事なんて行かないですよ」と否定してしまうと、不安がさらに強まり、混乱を招きます。不安や混乱は、さらなる不穏に繋がってしまう可能性が高まるので注意しましょう。

事例③ ショートステイの利用者Cさんへの対応と声かけ

ショートステイを利用し、介護施設に泊まりで訪れているCさん。普段は自宅で過ごしています。夕食後、自分の居室で過ごしていたCさんですが「財布がない」「お金はどうすれば…」と不安な様子で居室から出てきました。その後「家に取りに行かないと」「今日はもう家に帰ります」と帰宅願望が出現。

Cさんの場合、不安要素はいつも手元にあるはずの持ち物が見当たらないこと。ショートステイなどでは、トラブル防止のため、貴重品の持ち込みをお断りしている場合も多いです。その場合は、現金を抜いた財布のみを持参してもらうなどの対応が有効です。

このようなケースでは、利用者さんは「持ってきたはずの物がない」という認識であることが多いため「財布は持ってきてないですよ」と言っても納得しない場合もあります。利用者さんが居室内を探している様子がある場合は「一緒に探してみましょうか」などと声をかけたり「お金はいただかないので大丈夫ですよ」と言ったりして、不安を取り除くことを優先すると良いでしょう。

▼関連記事
高齢者とのコミュニケーション方法!相手に寄り添う上手な会話のコツとは

帰宅願望に関するよくある質問

ここでは、帰宅願望に関するよくある質問にお答えしています。

なぜ帰宅願望が出現してしまうのでしょうか?

帰宅願望が出現する理由は、利用者さんがさまざまな理由で不安を感じているからかもしれません。認知症により自分が施設に入居していることを忘れてしまったり、居室の移動や入居者の入れ替わりなどにより周辺の環境に変化があったりすると、利用者さんは不安から帰宅願望を訴えることがあるようです。詳しくは、本記事の「帰宅願望の原因は「不安」」もご覧ください。

帰宅願望のある利用者さんにどう声掛けする?

帰宅願望がある利用者さんに対して、「帰れないですよ」「ここにいてください」のように否定や行動を制限する発言は好ましくありません。「今日はここに泊まっていきませんか?」と寄り添う声掛けや、「今日のごはんは〇〇だそうですよ」のように他のことに興味を逸らすような声掛けをするのが効果的です。嘘を織り交ぜた声掛けも時には必要ですが、「明日帰れますよ」のように期待させるような嘘は信頼を失うきっかけになりますので、そのような声掛けは避けましょう。詳しくは、本記事の「帰宅願望が出現した時の対応と声掛けの具体例」も参考にしてみてください。

まとめ

本記事では、介護現場における帰宅願望の対応と声かけの具体例を中心にお伝えしました。

帰宅願望は「家に帰りたい」という訴えが頻回にあったり、実際に施設から出て行こうとする行動が見られたりする症状のこと。認知症などに伴って現れることの多い症状ですが、帰宅願望は決して「悪いもの」ではありません。

帰宅願望の対応が「うざい」「めんどくさい」と感じる場合は、一度ケアの方法を見直すことをおすすめします。また、時間が限られた中で質の高いケアが難しい・対応しきれないと感じる場合は、フロアの介護スタッフと対応を協議する場を設けることも必要です。

しかしながら、介護職員の人員不足などにより、利用者さんひとりひとりに寄り添ったケアが難しい場合もあるでしょう。そのような場合、日常的に帰宅願望をより強く出現させてしまっている可能性があります。

「もっと寄り添ったケアがしたい」「正しい対応をする余裕が持てない」と感じている場合は、余裕を持ってケアができる職場を探して転職を検討してみてもいいかもしれません。

きらケアでは、介護業界に特化した転職支援を行っています。介護業界に精通したアドバイザーがひとりひとりの希望に合わせたご提案をさせていただきます。
「利用者さんと向き合ってしっかりとケアをしたい」「介護技術の向上が見込める職場がいい」など、ご希望をお聞かせください。
なお、登録・ご利用はすべて無料です。お気軽にご登録くださいね。

登録は1分で終わります!

アドバイザーに相談する(無料)


Viewing all articles
Browse latest Browse all 642

Trending Articles