
この記事のまとめ
- 社会福祉士とは、生活に困難がある方の相談援助を行うための国家資格
- 社会福祉士を取得するメリットは、知識が身につくことや選択肢が増えること
- 社会福祉士になるには、大学に通うルートや実務経験を積むルートなどがある
社会福祉士の資格を取得するメリットが気になる方もいるのではないでしょうか。社会福祉士の資格を取得することで、専門知識が身についたり活躍の場が広がったりするメリットがあります。この記事では、社会福祉士を取得するメリット・デメリットや、試験の受験資格を得る方法、試験科目などを解説。社会福祉士の資格を取得するかお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
社会福祉士とは
社会福祉士とは、「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められた国家資格です。名称独占なので、資格を保有していない人が社会福祉士を名乗ることはできません。
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士は、障がいがあることや貧困などにより生活に課題を抱える方に対し、相談に乗ったり援助を行ったりします。給付金などの補助金制度や施設への入居方法、介護サービスの利用方法に関する相談に乗ることが多いようです。
福祉サービスや医療機関と連携・調整し、必要な支援につなげることも仕事の一つ。社会福祉士は、高齢者福祉や児童福祉、生活保護、障がい者支援など、さまざまな福祉に携わっています。
詳しくは、「社会福祉士とは?仕事内容や資格の難易度を取得検討中の方向けに解説!」でも解説しているので、あわせてご覧ください。
出典
e-GOV法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」(2025年4月1日)
社会福祉士が活躍する場所
社会福祉士が勤務するのは、入居型の介護施設やデイサービス、障害者支援施設、地域包括支援センター、福祉事務所などの職場です。ほかにも、病院などの医療施設や、児童福祉施設、学校に勤務することもあります。
社会福祉士は、「生活相談員」や「ソーシャルワーカー」として、福祉に関わる幅広い場所で活躍中です。
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社会福祉士を取得する7つのメリット
ここでは、社会福祉士を取得する7つのメリットを紹介します。社会福祉士資格の取得を考えている方は、ぜひご一読ください。
1.専門知識が身につき自信がつく
社会福祉士は国家資格であり、介護・福祉系の資格の中でも上位に位置する専門性が高い資格です。そのため、社会福祉士を取得すると、専門性の高い知識やスキルが身についていることを証明できます。
また、専門知識を身につけることで業務をスムーズに行えるようになるため、働くうえでの自信にもつながるはずです。
2.社会的信用を得られる
社会福祉士を取得すると、介護・福祉の知識を国に認められたと評価され、社会的な信頼感も高まるでしょう。また、名称独占資格のため、自身の立場を一言で説明できるようになります。
資格がなくても介護・福祉業界で働くことは可能ですが、社会福祉士の肩書きを持つことで、就職面接で有利になる可能性があるでしょう。利用者さんから相談を受ける際は、社会福祉の専門知識に基づいたアドバイスができるので、発言の信頼性が高まるのもメリットです。
3.活躍の場が豊富
社会福祉士は、活躍の場が数多くあるので、その分応募可能な求人も豊富です。介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、デイケア、有料老人ホームなど、さまざまな求人から職場を選べます。
また、活躍の場が多数あることで、自身のやりたい支援を行える職場を選びやすい可能性もあるでしょう。
4.ほかの資格取得の際にも効果的
社会福祉士の資格を取得しておくことで、ほかの資格を取得する際に役立つことがあります。たとえば、精神保健福祉士の試験には、社会福祉士と共通の科目があり、すでに資格を有している場合は共通科目を免除して試験を受けることが可能です。国家資格を2つ持つことができれば、さらなるスキルアップが期待できるでしょう。
また、社会福祉士を取得すると、社会福祉主事任用資格の要件を満たしていることになります。登録手続きを行い、各都道府県や市区町村の福祉事務所に配属されれば、ケースワーカーとして働くことが可能です。
5.資格手当がもらえる
社会福祉士の資格を取得することで、事業所によっては資格手当の支給の対象となる可能性があります。手当が付くようになれば、収入アップが見込めるでしょう。
厚生労働省の「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果 (p.161)」をもとに、介護職員(月給制・常勤の者)の平均給与額を資格別にまとめました。
職種 | 平均給与額 |
社会福祉士 | 39万7,620円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 38万8,080円 |
介護福祉士 | 35万50円 |
介護福祉士実務者研修 | 32万7,260円 |
介護職員初任者研修 | 32万4,830円 |
資格なし | 29万620円 |
参考:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果 (p.161)」
社会福祉士は、ほかの資格を保有する介護職員に比べて給与が高い傾向にあります。無資格者と社会福祉士の平均給与の差は10万円以上です。介護業界で働く場合、社会福祉士などの専門性の高い資格を取得することで給与アップが見込めるでしょう。
出典
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年4月1日)
6.社会福祉士事務所の独立開業も可能
社会福祉士として経験を積めば、独立してフリーランスで働いたり、事業所を開業したりすることも可能です。
また、認定社会福祉士の取得などの要件を満たせば、「独立型社会福祉士」という肩書きを得て独立して働くこともできます。独立型社会福祉士として登録すると、信用性を高められるので、独立したい方は独立型社会福祉士を目指すのも良いでしょう。
7.特別養護老人ホームの施設長の条件を満たせる
社会福祉士の資格を取得すると、社会福祉主事の要件をクリアできるので、特別養護老人ホームの施設長の資格要件を満たせます。努力すれば施設長になるのも夢ではありません。
社会福祉士は、特別養護老人ホーム施設長だけではなく、相談援助を行う様々な職種の資格要件にもなっています。そのため、介護・福祉業界でのキャリアアップを目指している方は、社会福祉士の取得を目指してみると良いでしょう。
出典
厚生労働省「施設長の資格要件等」(2025年4月1日)
社会福祉士を取得するデメリット
社会福祉士の取得にはデメリットもあります。資格取得に向けて動く前に、メリットだけではなくデメリットもあわせて確認しておきましょう。
資格取得までに費用・時間がかかる
社会福祉士を取得するには、福祉系の大学や一般養成施設、短期養成施設に通学する必要があり、学費や受験・登録に費用がかかります。また、受験勉強の時間や、受験資格として実務経験が求められるので、資格取得を目指してから実際に試験を受けるまでに年単位の時間がかかることもあるでしょう。
社会福祉士の取得を検討する際は、5年後、10年後のキャリアプランを考えたうえで、自身に必要な資格がどうか判断することが大切です。
社会福祉士を取得しなくても働ける現場が多い
「介護職員として働きたい」「福祉の現場で働きたい」というだけなら、社会福祉士を取得する必要性は低いかもしれません。
介護・福祉業界は、未経験・無資格から働き始めやすい業界です。無資格から働ける現場も少なくないので、相談援助以外の業務に携わりたい場合は、社会福祉士を取得しなくても良い可能性があります。
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「社会福祉士はやめとけ」と言われる理由は?向いている人やメリットを解説
社会福祉士の資格を取得する方法

引用:厚生労働省「社会福祉士の資格取得方法」
社会福祉士の資格を取得する方法は大きく分けて4つあります。
福祉系大学・短大のルートの場合
4年制福祉系大学で指定科目を履修した場合は、卒業と同じ年度に社会福祉士国家試験を受験することが可能です。また、3年制短大の場合は相談援助の実務経験を1年、2年制の場合は相談援助の実務経験を2年積むことで、社会福祉士国家試験の受験資格を得られます。
短期養成施設ルートの場合
福祉系大学・短大で基礎科目を履修し、短期養成施設に通うルートもあります。学歴や実務経験の要件を満たし、短期養成施設で6ヶ月以上学ぶことで、社会福祉士国家試験を受験可能です。
4年制大学の場合は実務経験を問われませんが、3年制短大では相談援助の実務経験1年、2年制では実務経験2年が求められます。また、社会福祉主事養成機関を経た人は、2年間の相談援助実務の経験が必要です。
一般大学等+一般養成施設ルートの場合
一般大学・短大に通学した方が社会福祉士国家試験を受けるには、一般養成施設で1年以上学ぶ必要があります。3年制・2年制の短大に通学していた場合、通学期間に応じた相談援助の実務経験が必要です。
働きながら資格取得を目指す場合
短大や大学を卒業していない方が、働きながら社会福祉士の取得を目指す場合は、相談援助の実務経験が4年必要です。実務経験を積んだあと、一般養成施設に1年以上通うことで、社会福祉士国家試験の受験資格を得られます。
相談援助に携わった経験があり、学歴の要件を満たすのが難しい方が、社会福祉士の取得を目指す際におすすめの方法です。
学歴によってベストな取得方法は変わるので、「社会人が社会福祉士になるには?一般養成施設の選び方も解説」の記事でご自身にぴったりの方法を確認してみてください。
出典
厚生労働省「社会福祉士の資格取得方法」(2025年4月1日)
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター 「[社会福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図)」(2025年4月1日)
社会福祉士国家試験の概要
ここでは、社会福祉士国家試験の概要を解説します。受験を検討している方はチェックしておきましょう。
社会福祉士国家試験の日程
社会福祉士国家試験は、例年2月上旬に実施されています。公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの「[社会福祉士国家試験[試験概要]」によると、第38回試験は、2026年2月上旬の予定です。受験申し込みには受付期間が定められており、第38回試験は、2025年9月上旬から10月上旬とされています。
「気がついたら申し込み期間が過ぎていた」ということのないよう、試験センターのWebサイトで確認するようにしましょう。
社会福祉士国家試験の出題科目
同センターの「[社会福祉士国家試験]合格基準」によると、第37回社会福祉士国家試験の出題範囲は、以下の6科目群でした。
- 1. 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム
- 2. 社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度
- 3. 地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉
- 4. ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎
- 5. 高齢者福祉、児童・家庭福祉、貧困に対する支援、保健医療と福祉
- 6.ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)、ソーシャルワークの理論と方法(専門)、福祉サービスの組織と経営
社会福祉士国家試験は、午前の部と午後の部に分かれて行われます。合格基準は、総得点の60%程度を基準とし、難易度によって補正した点数以上得点することと、6科目群すべてで得点があることです。出題形式は五肢択一、全129問で、試験時間は225分となっています。
なお、試験科目や試験地などの詳細は年によって異なる可能性があるので、公式サイトをしっかり確認しておきましょう。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[社会福祉士国家試験[試験概要」(2025年4月1日)
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[社会福祉士国家試験]合格基準」(2025年4月1日)
社会福祉士国家試験の合格率
厚生労働省の「第37回社会福祉士国家試験合格発表」によると、2025年に実施された社会福祉士国家試験の合格率は56.3%でした。社会福祉士の試験は、福祉系の国家試験の中では難易度が高めです。
出典
厚生労働省「第37回社会福祉士国家試験合格発表」(2025年4月1日)
社会福祉士のメリットに関するよくある質問
ここでは、社会福祉士のメリットに関するよくある質問に回答します。社会福祉士を目指している方は、ぜひご一読ください。
社会福祉士にしかできない仕事はありますか?
社会福祉士に限定される仕事は基本的にないものの、ケースワーカーや特別養護老人ホームの施設長、生活相談員などの職種は、社会福祉士が資格要件の一つです。社会福祉士は国家資格であり、保有していると、高齢者福祉や児童福祉、障がい者支援などに、相談援助の専門家として携わることができます。具体的な仕事内容は、「生活に困りごとがある方の相談業務」「福祉サービスや医療機関との連携・調整」などです。
社会福祉士の主な就職先を教えてください
この記事の「社会福祉士が活躍する場所」によると、社会福祉士の就業先は介護施設や地域包括支援センター、児童福祉施設など多岐にわたります。比較的求人数が多いことは、社会福祉士になるメリットです。就業先の種類によっては、「生活相談員」や「ソーシャルワーカー」のように呼ばれるため、求人を探す際は注意してみてください。
社会福祉士と介護福祉士どちらを目指す方が良いですか?
社会福祉士と介護福祉士はどちらも国家資格であり、福祉分野に興味がある方は、どちらの資格を取得しても活躍できるでしょう。社会福祉士は相談援助業務に携わりたい方におすすめ。「介護の知識やスキルを磨きたい」と考えている方には、介護福祉士の資格取得がおすすめです。
社会福祉士と介護福祉士の違いは、「介護福祉士と社会福祉士の違いとは?仕事内容や資格について解説!」の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
社会福祉士の資格を取得すると、知識を身につけられて自信につながったり、ほかの資格を取得する際に役立ったりするでしょう。ほかにも、給与アップやキャリアアップが狙えるなど、さまざまなメリットがあります。
社会福祉士の資格を取得するには、社会福祉士国家試験に合格する必要があります。受験資格を満たす方法は大きく分けて4通りあり、実務経験を積むことでも受験資格を得られるので、働きながら資格取得を目指すことが可能です。社会福祉士国家試験の受験資格である実務経験は、介護施設や事業所でも積むことができます。
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