
この記事のまとめ
- 障害者グループホームでは、職員も利用者さんもトラブルのきっかけとなる
- 障害者グループホームの世話人ができるトラブルの対処法は、主に4つある
- 障害者グループホームのトラブルを防止するには、利用者さんへの理解が必要
障害者グループホームで世話人が遭遇しやすいトラブルを知りたい方もいるでしょう。障害者グループホームでは、騒音による苦情や虐待など、利用者さんと職員それぞれに起因するトラブルが起こります。この記事では、障害者グループホームで起こりやすいトラブルや、世話人ができる対処法を解説します。世話人ができるトラブルの予防方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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障害者グループホームの世話人が遭遇しやすいトラブルには、利用者さんがきっかけとなるものと、職員がきっかけとなるものがあります。それぞれ、どのようなトラブルがあるのか、詳しく見ていきましょう。
利用者さんがきっかけで起こるトラブル
障害者グループホームにおいて、利用者さんがきっかけとなるトラブルには、次のようなものがあります。
利用者さんが外出したまま帰って来ない
利用者さんが行き先を告げずに外出し、そのまま行方不明になるトラブルが起きることがあるようです。
障害者グループホームは自立をサポートするのが役割なので、日中の外出は自由な場合が多いでしょう。しかし、共同生活の場でもあるため、門限が設けられていたり、外泊する場合は連絡するというルールがあったりするのが一般的です。いつも帰ってくる時間になっても、利用者さんが帰って来ず、連絡が取れないと対応が必要になります。
騒音でほかの利用者さんや近所から苦情が入る
障害者グループホームでは、騒音トラブルも少なくありません。利用者さんは、感情が不安定になり、大きな声を出してしまう場合があります。グループホームの外まで聞こえる声を出し、近隣住民と揉めごとになってしまったり、夜間に大きな音を立ててほかの利用者さんから苦情が入ったりすることがあるようです。
また、マンション・アパートタイプのグループホームでは、足音などの生活音によって近隣トラブルが起こることも考えられます。
職員やほかの利用者さんへの暴言・暴力がある
障害者グループホームの利用者さんは、感情のコントロールが難しいことや、意思表示がうまくできないことがあります。こだわりの強さや不安感などの理由から、職員やほかの利用者さんへの暴言を吐く・暴力をふるうなど乱暴な行動をとってしまい、トラブルに発展するケースもあるようです。
職員がきっかけで起こるトラブル
障害者グループホームにおけるトラブルには、職員がきっかけとなって起こるものもあります。
利用者さんへの不適切な対応がある
利用者さんに対して、虐待や介護放棄などの不適切な対応があると、トラブルに発展してしまいます。虐待は、暴力や不必要な身体的拘束、無理やり口に食べ物を押し込むといった身体的虐待だけではありません。威圧的な態度・無視・侮辱による精神的虐待や、性的な言動を行うといった性的虐待などもあります。また、必要な介護や援助をせず、利用者さんの身体的・精神的状態を悪化させてしまう「介護放棄」が発生することもあるようです。
金銭管理に問題がある
金銭トラブルも、障害者グループホームで起こり得るトラブルのひとつです。貴重品を保管している場所の鍵を職員が自由に取り扱える場合、それを利用して窃盗してしまったり、利用者さんから預かった金銭を着服してしまったりということが考えられます。
利用者さんの財産を不当に処分したり、必要以上に金銭の利用を制限したりすることは、経済的虐待とも呼ばれ、福祉に携わる職員がしてはいけない行為です。
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障害者グループホームで世話人ができるトラブルへの対処法
障害者グループホームでトラブルが起きてしまった場合、世話人は以下のような対応を行いましょう。
トラブルの原因や状況を確認する
トラブルが発生した際は、まず状況と原因を把握する必要があります。トラブルを起こしてしまった本人や被害者、周囲で見ていた人など、関係者に事実確認をしましょう。トラブルの解決や改善策を考えるためには、なぜトラブルが起きてしまったのかしっかり調べることが重要です。
管理者に報告・相談する
障害者グループホームでトラブルが起きたときは、速やかに管理者に報告・相談しましょう。世話人が1人で判断して責任を負う必要はないので、早めに管理者に指示を仰ぐことをおすすめします。トラブルに適切に対処するためには、上司への報告やほかの職員との連携が不可欠です。
トラブルへの対応や利用者さんの精神的なケアを行う
トラブルが起きた場合は、管理者に指示を仰いだうえで、世話人としてできる対応をしましょう。たとえば、トラブルを起こした本人や、被害者となった利用者さんなど、トラブルに関わった利用者さんの精神的なケアは世話人にできる重要な仕事です。
状況を記録し再発防止策を検討する
対応が落ち着いたら、トラブルが起きた状況や理由を記録し、再発防止の方法を検討することも大切です。トラブルの状況や解決した方法から、再発防止策を立案します。再発防止策は職員全体で話し合って作成し、実際に行動に移しましょう。
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障害者グループホームのトラブル別の対処法
ここからは、障害者グループホームで問題が起きた際の対処法を、トラブル別に分けて解説します。
利用者さんが帰って来ないときの対処法
利用者さんが行き先を告げずに外出して、そのまま帰ってこない場合は、職員で捜索しましょう。最後に見かけた場所や時間を特定し、それを手がかりに利用者さんを探します。また、家族への連絡や、警察への捜索届の提出も必要です。
騒音トラブルへの対処法
利用者さんの独り言が大きかったり、大声を発してしまったりするときは、ほかの利用者さんと物理的に距離を置けるよう、居室などに移動しましょう。音に敏感な利用者さんや近所からの苦情を予防するには、声や足音が響くことを防止する吸音材や防音パネルの設置も有効です。
利用者さんに暴言・暴力がある場合の対処法
利用者さんに暴言や暴力があることが事前に判明した場合は、自立した共同生活を送れるのか、慎重に検討して入居を判断する必要があります。入居後に暴言や暴力がみられた場合は、利用者さんと暴力・暴言を受けた人両方の言動から、問題行動の原因を探りましょう。利用者さんの感情が不安定なときには、静かな環境で落ち着いてもらえるよう、適切な距離から見守りつつ、状況に応じたケアを行います。
また、ケガやトラブル防止のため、暴言や暴力はその都度正確に記録することが重要です。記録を残すことで、問題を放置せず、必要なケアを行った証明にもなります。
職員による不適切な対応がある場合の対処法
職員から利用者さんへの不適切な対応がある場合、利用者さんと職員にヒアリングをしましょう。
職員の不適切な言動により、利用者さんが不安を抱えている場合、早めにケアをしないと、新たなトラブルに発展するリスクもあります。そのため、利用者さんへの謝罪や精神的なケアを優先して行うことが大切です。
利用者さんへの対応と並行して、職員全体への状況の確認も行いましょう。たとえば、業務の忙しさが介護放棄や虐待の要因の一つになっている場合、指導に加えて人員の確保も求められます。また、職員がどのような行為が虐待にあたるか理解することも大切です。
トラブル予防のためには、虐待防止委員会や相談窓口の設置、虐待防止マニュアルの周知などが必要になるでしょう。
金銭トラブルへの対処法
金銭トラブルの防止に有効なのは、記録とダブルチェックです。まずは金銭管理マニュアルを策定し、職員に周知します。利用者さんから貴重品や金銭を預かった場合、しっかりと出納帳に記録し、出入金時には2人以上の職員でダブルチェックをすることで、盗難だけではなく、意図しない紛失の防止にもつながるでしょう。現場の職員だけに金銭管理を任せるのではなく、管理担当者が定期的に金銭を確認することも重要です。
障害者グループホームの世話人がトラブルを防止する方法
障害者グループホームのトラブルを防止するために世話人ができることは、利用者さんや職員との関わりを通してトラブルが起こりにくい環境をつくることです。具体的にどのようなことができるのか、詳しく見ていきましょう。
利用者さんの特性に応じた対応をする
トラブルの防止策としてもっとも有効なのは、利用者さん一人ひとりの性格や特性を理解し、柔軟に対応することです。トラブルが起こる理由や状況を把握して対応することが、トラブル回避につながります。たとえば、行方不明になったことがある利用者さんが、夜間に玄関付近に1人でいたら声をかけるなど、行動を見守って支援しましょう。
利用者さんが何を不安に感じるか理解する
利用者さんの「自分の伝えたいことがうまく伝わらない」という不満や苛立ちから発生するトラブルもあります。そうしたトラブルを防止するには、日ごろからコミュニケーションをとって利用者さんの気持ちを理解し、伝えようとしていることをくみ取れるよう努めることが重要です。
安心して生活できる環境をつくる
利用者さんが安心して生活できる環境をつくることも、トラブル防止策のひとつです。利用者さんの問題行動は、不満の発散や要求を伝えるための手段の可能性があります。
たとえば、虐待を受けている場合、表情や行動に変化が現れることもあるでしょう。利用者さんを理解し、変化に気づけるよう観察することで、本人の望む環境づくりが可能です。そのため、利用者さんと接するうえで気になる変化があれば、職員間で共有することを心がけましょう。
職員間で十分にコミュニケーションをとり連携する
職員間でしっかりと連携することもトラブル防止になります。不明点や疑問点があるときにすぐに尋ねたり、施設内でのトラブルを報告しやすかったりというように、報告や確認がすぐにできる風通しの良い環境づくりに努めましょう。
職場環境を整える
職場環境を整えることで、職員によるトラブルの発生を防止することができます。人材不足によって職員が疲弊すると、判断力が鈍りトラブルが起こる可能性が高まるため、十分な人員確保が必要です。また、スタッフが十分に育成されていないと適切な介護・対応ができない場面が出てくるため、人材育成も重要となります。
世話人として働いていて、職場環境が整備されていないと感じる場合は、管理者に改善できないか相談してみるのがおすすめです。
虐待防止や障がいのある方の権利について勉強する
虐待防止や障がいのある方の権利についての知識を身につけ、理解を深めることもトラブルの対策になります。正しい知識を身につけることで、自分やほかの職員が適切な支援を行えるようになるでしょう。
たとえば、障害者グループホームの世話人が身につけておきたい知識として、「障害者権利条約」があります。障がいのある方の権利について理解することで、人権やプライバシーに配慮したケアができたり、虐待防止につなげられたりするでしょう。
出典
外務省「障害者の権利に関する条約」(2024年10月24日)
説明会やあいさつで地域との連携を深める
地域住民に対して説明会を開催したりあいさつをしたりして、交流を深めることも大切です。障害者グループホームでのトラブルを防止するためには、地域住民の理解や協力が必要になります。日ごろから説明やあいさつをしっかりとしておくことで、利用者さんへの理解を得やすくなるはずです。
障害者グループホームの世話人に関するQ&A
ここからは、障害者グループホームの世話人に関してよくある質問に回答します。世話人や生活支援員の仕事に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
障害者グループホームで働くのに向いている人は?
障害者グループホームで働くのに向いているのは、利用者さんの気持ちに寄り添い、小さな変化に気づける人です。トラブルを防止するためにも、利用者さんと接するなかで相手を理解し、何を伝えたいのかをくみ取ることが大切です。障害者グループホームに適性があるかチェックしたい方は、「障害者グループホームはきついって本当?向いている人ややりがいを解説」の記事をご覧ください。
障害者グループホームで働くメリットは?
障害者グループホームで働くメリットは、利用者さんが少人数のため、細やかなケアができることです。また、利用者さんが比較的自立しており、体力的な負担が小さい傾向にあることもメリットといえます。障害者グループホームの仕事について詳しく知りたい方は、「障害者グループホームの1日の流れを紹介!世話人や生活支援員の仕事とは?」もご参照ください。
まとめ
障害者グループホームで起こりやすいトラブルは、利用者さんの行方不明や騒音トラブル、暴言や暴力などです。利用者さんへの虐待や金銭の盗難といった、職員の不適切な対応がきっかけで起こるトラブルもあります。
障害者グループホームにおけるトラブルに対して世話人ができることは、利用者さんへの理解を深めることや、職員間で報告・相談し合って連携することです。利用者さんへの理解を深めて適切に対応したり、職員同士で十分にコミュニケーションをとったりすることで防止できるトラブルは多くあります。
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