
この記事のまとめ
- 介護事務の主な仕事内容は、介護報酬請求事務と一般的な事務業務
- 介護事務が難しいといわれる理由は、介護保険の知識が求められることなど
- 介護事務に向いている人は、介護保険制度に興味がある人や計算が得意な人
「未経験だと介護事務の仕事は難しいの?」と気になる方もいるでしょう。介護事務は介護サービスを提供する施設や事業所で、介護報酬請求や事務作業を行う職種です。介護保険制度の知識が求められるため、「難しい」と感じる人もいるかもしれません。この記事では、介護事務の仕事内容や難しいといわれる理由を紹介。また、介護事務の仕事で活かせる資格も解説するので、介護事務員の仕事に興味のある方は参考にしてみてください。
介護事務の仕事内容
介護事務員の主な仕事内容は、大きく分けて「介護報酬請求事務」と「事務作業」の2つです。以下で、「介護報酬請求業務」と「事務業務」の具体的な仕事内容を解説するので、ぜひご覧ください。
介護報酬請求業務
介護報酬請求業務とは、介護施設や事業所の主な収入源である「介護報酬」の請求に必要なデータの作成・提出などを行う仕事を指します。
介護施設で提供した介護サービスの費用は、1割~3割を利用者さんが負担して、残りの7割~9割は国民健康保険団体連合会(国保連)から介護報酬として支払われる仕組みです。
介護事務員は、介護報酬を受けるのに必要な「介護給付費請求書」や「介護給付費明細書」などを、施設や事業所で提供している介護サービスに応じて作成。Web経由で伝送するか、CD-Rなどの磁気媒体を郵送で提出します。
国保連から介護報酬が支払われたら内容を確認し、再請求が必要であれば対応しなければなりません。
介護報酬の収益は施設の経営に関わるため、介護報酬請求を行う介護事務は責任の大きい仕事だといえるでしょう。そのほか、利用者さんへの請求書の作成も、介護事務員の仕事です。
事務業務
施設によって業務範囲は異なりますが、介護事務員は受付業務や電話対応、労務管理、経理といった一般的な事務作業も行います。介護施設には、入居の説明や面会に訪れる方や業者の方など、多くの方が訪れるため、部屋まで案内したり担当者へ取り次ぎをしたりすることも。さらに職員の給与計算や備品の発注など、介護事務員の仕事は多岐にわたります。
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介護事務が難しいと感じること
介護事務の仕事が難しいと感じる理由として、「介護保険制度の知識が求められる」「業務の責任が大きい」「介護業務と事務業務を兼務することがある」といった内容が挙げられます。
ここでは、介護事務が難しいといわれる理由をご紹介するので、参考にしてみてください。
介護保険制度の知識が求められる
介護報酬請求業務には、介護保険制度の知識が必要とされるため、介護保険制度を理解するまでは難しいと感じることがあるようです。介護保険制度は3年に1度、見直しが行われるため、常に新しい情報を把握する必要があるのも介護事務が大変と感じる理由の一つだといえます。とはいえ、請求の流れや計算方法などを覚えてしまえば、スムーズに行えるようになるものです。「難しそう…」と過剰に心配する必要はないでしょう。
業務の責任が大きい
前述のとおり、介護報酬の収益は施設の経営に関わるため「業務の責任が大きくて大変」という声もあります。介護報酬請求で不備があると、国保連や市区町村での審査が通らず、介護給付費請求書や明細書が戻されてしまうことも。戻されてしまうと、介護報酬の支払いが遅れてしまうため、介護事務の責任は大きいといえるでしょう。
仕事に対し、責任の大きさや難しさを感じるかもしれませんが、最初は上司や先輩がサポートしてくれるはずです。分からないことは質問をして、繰り返し経験を積むうちに慣れていくでしょう。
介護業務と事務業務を兼務することがある
介護施設によっては、介護事務員が利用者さんの送迎や入浴介助、食事の配膳などのサポートに入ることもあります。介護業務と兼務する場合、集中して事務業務を行えないため、両立が難しいと感じることがあるようです。
また、デスクワークを想定して入職した場合に、「思っていた業務と違う」といったミスマッチを感じる可能性も。入職前に、業務内容をしっかり確認しておくことが大切です。
「介護業務って何するの?」「未経験でも介護業務ができるの?」と気になる方は、「介護職は資格なしでも働ける?未経験だと大変?仕事内容や転職事情を解説」の記事をご覧ください。無資格でも働ける理由や無資格でできる業務内容などを解説しています。
介護事務員の1日のスケジュール
ここでは、介護老人福祉施設で働く介護事務員の1日のスケジュールをご紹介します。介護事務員の仕事に興味のある方は参考にしてみてください。
午前8時30分 | 出社して制服に着替える 朝礼やミーティングを行う |
午前9時~正午 | 受付業務や電話対応を行いながら、パソコンで介護給付費明細書を作成する 介助の人手が足りない場合には、介助サポートに回る |
正午~午後1時 | 交代でお昼休憩に入る |
午後1時~午後5時30分 | 受付業務や電話対応を行いつつ、必要書類の作成を行う 施設によってはシフト作成や備品の注文を担当することもある 面会に来たご家族を案内する レクリエーションの手伝いを行う |
午後5時30分 | 1日の実績入力や記録を行う 業務が完了次第退勤する |
介護職は夜勤に入るイメージがあるかもしれませんが、介護事務員は日勤がメインなのが特徴です。家庭の事情などで夜勤に入るのが難しい方にとって、介護事務は働きやすい職種であるといえるでしょう。
なお、上記はあくまで一例で、一日のスケジュールは施設によって異なります。
介護事務に向いている人
介護業務に興味のある方の中には、自分が介護事務に向いているか気になる方もいるでしょう。ここでは、介護事務に向いている人の特徴をご紹介します。
なお、介護事務に向いている人の特徴に当てはまらないからといって、介護事務員になれないわけではありません。あくまで参考程度にご覧ください。
介護保険制度に興味がある
介護事務員として仕事をするには、介護保険制度を十分に理解している必要があるため、介護保険制度に興味がある方は向いているといえます。介護保険制度に興味があれば、スムーズに仕事を覚えられるでしょう。
パソコンスキルがある
介護報酬請求は基本的にパソコンで行うため、介護事務はパソコンスキルを活かせる仕事です。介護報酬請求だけではなく、利用者さんへの請求書の作成やデータ入力、社内文書の作成など、パソコンで行う仕事は多数あります。パソコンスキルがあれば、介護事務の書類作成にもすぐに対応できるようになるでしょう。
数字や計算が得意
介護事務は、介護報酬請求や請求書作成、会計処理など数字を扱う仕事が多くあります。そのため、計算や数字のチェックが素早くでき、万が一ミスがあった場合でもすぐに違和感に気付けるような人は、介護事務に向いているといえるでしょう。
スケジュール管理能力がある
介護事務の仕事はスケジュール管理が重要なので、スケジュール管理能力がある方に向いています。特に介護報酬請求は、毎月1日~10日までと締め切りが決められており、締め切りに間に合わないと介護報酬の支払いが予定より1ヶ月遅れてしまうことも。介護報酬の支払いが遅れてしまうと運営に影響を与えてしまう可能性があるため、スケジュールをしっかり組んで計画的に仕事へ取り組める人は、介護事務員として活躍できるでしょう。
コミュニケーションスキルがある
コミュニケーションを取るのが好きという方は、介護事務に向いています。介護現場では利用者さんやご家族、介護職員、看護職員など、多くの人や職種と関わる場面が多々。誰とでも円滑にコミュニケーションが取れる方は、周りから重宝されるでしょう。
また、認知症や後遺症などでコミュニケーションがスムーズに取れない利用者さんもいるので、臨機応変に対応を変えられる能力があると役立ちます。
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未経験でも介護事務員として働ける?
介護事務員になるのに必要な資格は定められていないため、未経験から介護事務員として働けます。しかし、スムーズに業務を行うには、ある程度の専門知識が求められるため、「介護事務の仕事は難しいと聞いたから心配」と不安な方もいるでしょう。
次項では、介護事務員として仕事をするうえで活かせる資格をご紹介します。「介護事務に必要な資格が分からない」「なにか介護事務の資格を取得しておきたい」という方は、参考にしてみてください。
介護事務員として取得しておくと活かせる資格
介護事務員になるのに必須となる資格はないものの、介護事務の仕事で活かせる資格を取得していれば就職・転職の際にアピールポイントになります。また、事前に知識を得ることで、介護事務の業務にスムーズに慣れることができるでしょう。
介護事務管理士
介護事務管理士は、JSMA技能認定振興協会が管理している民間資格です。介護事務の資格の中でも歴史が長く、認知度が高い傾向にあります。受験資格は設けられていないため、誰でも受験が可能です。
学科試験はマークシート形式で10問あり、実技試験はマークシート形式で2問の解答が求められます。介護事務管理士技能認定試験は、すべての人が解答を求められる「共通問題」と解答する分野を選べる「選択問題」があるのが特徴。選択問題は、自分の得意分野が選べるので、得意分野を中心に学習するのが合格するポイントです。試験の合格率は、70%ほどとされています。
出典
技能認定振興協会「介護事務管理士®技能認定試験」(2025年1月15日)
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ケアクラーク
ケアクラークは、日本医療教育財団が管理する資格で、介護事務管理士と同様に民間資格です。介護施設や事業所における事務作業や報酬請求事務に関する知識を習得できます。
試験内容は、学科では介護事務知識を問う問題が60問(50分)、実技は20問(70分)で、いずれも入力・選択(〇×・択一)方式で行われます。実技の出題内容の詳細は、介護給付費請求額計算の事例が2つ、介護報酬明細書作成の事例1つです。学科試験と実務試験それぞれ得点率が70%以上で合格となります。
出典
一般財団法人 日本医療教育財団「ケアクラーク技能認定試験の概要」(2025年1月15日)
介護報酬請求事務技能認定試験
介護報酬請求事務技能検定試験は、日本医療事務協会が管理する民間資格です。前述の資格同様、学科試験と実技試験の2つで構成されており、介護保険制度の仕組みや給付管理業務などの理解が深められます。
介護報酬請求事務技能認定試験を受けるには、日本医療事務協会が認定する介護事務講座の修了が必要です。受験方法は、会場受験と自宅受験から選択可能。学科では25問の正誤問題、実技では介護給付費明細書の作成が2問、介護給付費明細書の穴埋めが1問出題されます。合格基準は、学科と実技の総得点の70%程度ですが、問題の難易度で補正があり、補正後の点数以上の正答率が必要です。
出典
日本医療事務協会「介護報酬請求事務技能検定試験とは」(2025年1月15日)
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介護事務員の給与
ここでは、事務職員の給与をご紹介します。
以下は、厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.119)」に基づく、介護施設で働く職員の平均給与です。
職種 | 平均給与(常勤) | 平均給与(非常勤) |
事務職員 | 307,960円 | 178,870円 |
介護職員 | 317,540円 | 209,540円 |
看護職員 | 373,750円 | 225,040円 |
生活相談員・支援相談員 | 342,330円 | 306,260円 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士または機能訓練指導員 | 354,770円 | 237,260円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 361,770円 | 250,710円 |
調理員 | 260,090円 | 122,160円 |
管理栄養士・栄養士 | 316,320円 | 192,270円 |
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.119)」
看護職員や理学療法士、作業療法士、ケアマネジャーなど、規定の資格を取得していないと従事できない職種は平均給与が高い傾向にあります。
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況 賃金の推移」によると、2023年度の一般労働者全体での平均賃金は31万8,300円です。常勤の事務職員の平均給与と比較すると、大きな違いはないので、介護事務の給与は労働者全体からみても平均的であるといえるでしょう。
出典
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年1月15日)
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(2025年1月15日)
介護事務に関するよくある質問
ここでは、介護事務に関するよくある質問に回答します。介護事務の仕事に興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
介護事務ってどんな仕事をするの?
介護事務の仕事は、介護報酬の請求や利用者さんへの請求書の作成、窓口業務、備品管理などです。介護職員のサポートをすることもあります。仕事内容は、施設によって異なるので事前に確認しましょう。
この記事の「介護事務の仕事内容」で、介護事務の具体的な仕事内容を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
介護事務の資格って難しいの?
介護事務に関する資格は複数ありますが、正答率70%ほどで合格とするものが多く、事前にしっかりと勉強すれば取得できるでしょう。介護事務の仕事で役立つ資格は、「介護事務管理士」や「ケアクラーク」「介護報酬請求事務技能認定試験」などがあります。この記事の「未経験でも介護事務員として働ける?」で、各資格の概要を解説しているので、ぜひご覧ください。
まとめ
介護事務員の仕事は、「介護報酬請求業務」と「事務作業」がメインです。通常の事務業務のほかにも、介護報酬や介護保険といった専門的な知識が必要とされます。そのため、「難しい」といわれることがあるようです。また、「業務の責任が大きい」「介護業務との兼務のため事務業に専念しにくい」といった内容も、介護事務が難しいといわれる理由として挙げられるでしょう。
介護事務員の業務範囲は、施設や事業所によって異なります。転職前に業務内容を把握していなければ、「デスクワークのみかと思っていたら、介護業務を任された」「自分のスキルと業務内容が見合わず仕事が辛い」といったミスマッチを感じるリスクにつながることも。そのようなことにならないために、自分の適性に合った職場を探すことが大切です。
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