
この記事のまとめ
- 認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位にあたる民間資格
- 認定介護福祉士になるには、要件を満たして養成研修を受講する必要がある
- 認定介護福祉士を取得することで身につくスキルは、介護の実践力や指導力
認定介護福祉士に興味がある方のなかには、「資格の特徴や取得方法が知りたい」という方もいるのではないでしょうか。認定介護福祉士は、介護福祉士の上位にあたる資格で、介護福祉士として実務経験を積んだ方が目指せます。資格を取得するには、受講要件を満たしたうえで、規定の養成研修を受けなければなりません。この記事では、認定介護士養成研修の受講要件や費用などを解説。認定介護士の役割や資格取得のメリットもまとめたので、ご覧ください。
介護資格の種類31選!取得方法やメリットを解説します認定介護福祉士とは
認定介護福祉士とは、介護福祉士の上位資格として設けられた民間資格です。「一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構」によって、多様化する介護ニーズに対応するためにつくられました。
認定介護福祉士は、2015年12月から始まった資格ですが、まだ世間にあまり知られていないかもしれません。認定介護福祉士の資格制度は、経験豊富な介護福祉士の中から、より質の高い介護サービスを提供できる人材を育成することを目的としています。
また、介護職における最上位の資格を新たに設けることで、これまで不透明だった介護福祉士取得後のキャリアパスが明確になり、介護職員のさらなるキャリアアップを促せるのではないかと期待されています。
認定介護福祉士が創設されたねらい
認定介護福祉士が創設されたのには、大きく分けて4つのねらいがあります。
- 介護福祉士の資質を高め、利用者さんのQOL向上、介護と医療の連携強化と適切な役割分担の促進、地域包括ケアの推進を図る
- 他職種に対して分かりやすく介護の根拠を説明したり、他職種からの情報や助言を適切に介護職のチーム内で共有したりすることで、スムーズに連携し、共有内容を介護サービスに反映する
- 介護福祉士の資格取得後も、介護業界で努力し続け、継続的に自己研鑽するための機会を提供する
- 介護福祉士の資格取得後のキャリアパスを整備する
このように、認定介護福祉士には介護の質を高めることと、介護職の目標づくりという目的があります。
出典
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士の役割と実践力」(2025年1月
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認定介護福祉士の3つの役割
認定介護福祉士は、「これまで培ってきた経験や知識、技術を活かして、利用者さんやほかの専門職と関わり支援する」という役割を担っています。
認定介護福祉士の役割を、分かりやすく3つにまとめたのでご覧ください。
1.介護施設や事業所のサービスマネージャーとしての役割
すべての利用者さんに最適なケアを提供するとともに、ほかのスタッフへの教育や指導を行い、サービスの質を向上させます。
2.介護サービス提供における連携の中核者としての役割
介護サービス提供において、医師や看護師、理学療法士などの他職種との連携、協働を強化します。
3.地域における介護力向上のための助言・支援者としての役割
利用者さんのご家族への支援を行うとともに、地域の施設や事業所、ボランティアなどの介護力を引き出して、利用者さんが生活する地域の介護力向上を促します。
出典
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士の役割と実践力」(2025年1月29日)
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認定介護福祉士の資格取得で得られるスキル
認定介護福祉士の資格を得るには養成研修を受ける必要があり、研修を通じて介護に関する総合的なスキルを身につけることが可能です。
以下では、実際に得られる具体的なスキルを紹介します。
高度な介護実践力
認定介護福祉士の資格取得で得られるスキルとして、リハビリテーションや医療、福祉用具、住環境などに関する知識が挙げられます。知識の習得により、どのような利用者さんに対しても最善のケアを提供できるようになるでしょう。
認知症のBPSD(行動・心理症状)を軽減するケアを提供できたり、障がい特性に応じた身体的、心理的ケアおよび終末期ケアを提供できる能力を身につけたりすることも期待できます。
介護職チームのリーダーを指導する力
リーダーシップやチームマネジメントを学ぶことで、現場のリーダーをはじめとする介護職チームの意識改革を行う力が身につきます。リーダーやほかの介護スタッフに対して、介護の根拠の説明や指導が可能となるでしょう。
サービス管理能力
介護記録の様式など、事業所のサービス管理に必要なツールを改善・開発し、その使い方を介護スタッフに指導する能力も身につきます。認定介護福祉士養成研修を通して、介護サービスの質の向上や管理について学ぶことが可能です。
他職種と連携する力
他職種からの情報を理解し、チーム内で共有して適切な介護を実現させるスキルが身につきます。
利用者さんの状況の変化をいち早く察知し、他職種と連携することで、心身の状況に応じた医療やリハビリの提供につなげられるでしょう。
地域と関わる力
利用者さんのご家族や地域のボランティアなどにおいて、介護に関する適切なアドバイスを行う力が身につきます。また、施設や事業所の介護力を地域の人たちのために活かせるようになり、地域の介護ニーズを分析できるようになるでしょう。
出典
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士の役割と実践力」(2025年1月29日)
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認定介護福祉士と介護福祉士の違い
認定介護福祉士と介護福祉士にはどのような違いがあるのか、以下でご紹介します。
資格の違い
認定介護福祉士は民間資格ですが、介護福祉士は国家資格です。介護福祉士になるには国家試験への合格が求められますが、認定介護福祉士になるための試験はありません。
介護福祉士としての経験を積んだうえで養成研修を受講し、研修を修了した後に認定申請が受理されれば、認定介護福祉士の資格を得られます。
仕事内容の違い
認定介護福祉士は、介護現場の中心に立つリーダー的な存在です。利用者さんへの直接的な介護をするだけでなく、看護師や医療チーム、リハビリスタッフと連携をとったり、ほかの介護職員への指導を行ったりするなど、幅広い業務に携わります。介護施設や事業所のマネジメントや、サービス管理といった業務も行うので、仕事内容が広範囲なのが特徴です。
介護福祉士も現場のリーダーとして活躍しますが、認定介護福祉士はリーダーを指導したり介護業界の課題解決に携わったりするなど、より専門性の高い役割を担います。
必要な実務経験の違い
介護福祉士の資格を実務経験ルートで取得するには、介護職員等としての3年以上の実務経験と、介護福祉士実務者研修の修了が必要です。養成施設ルートや福祉系高校ルートで介護福祉士試験を受験する場合は、基本的に実務経験や資格は問われません。
一方、認定介護福祉士の資格を取得するには、介護福祉士として5年以上の実務経験が求められます。そのうえで、認定介護福祉士養成研修を受講しなくてはならないので、未経験や無資格では認定介護福祉士にはなれません。
出典
社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]受験資格」(2025年1月29日)
待遇面の違い
介護福祉士が認定介護福祉士の資格を取得すると、スキルアップやキャリアアップが期待できます。認定介護福祉士の資格を保有することで、所属先の管理者から信頼を得られ、役職に就ける場合もあるでしょう。認定介護福祉士としての高い専門性が認められると、キャリアアップして給与が上がる可能性があります。
なお、現段階で認定介護福祉士を取得している方は少ないため、介護福祉士と待遇面を比較したデータはないようです。認定介護福祉士の取得は、待遇面への期待だけではなく、「介護福祉士としてさらにスキルアップしたい」という思いがある方に向いているでしょう。
認定介護福祉士になるメリット
認定介護福祉士は比較的新しい民間資格であることに加え、取得者もまだ少ない資格です。そのため、「取得すれば給与がアップする」「資格手当が付く」などの待遇改善が確実に約束されているわけではありません。
しかし、認定介護福祉士になることは、介護職のキャリアにとってプラスになります。下記で、資格取得のメリットを確認してみましょう。
今後の給料アップに期待がもてる
認定介護福祉士の認知度がアップし、その活躍が認められれば、待遇が良くなる可能性は大いにあります。すぐに給与アップに直結しなくても、今後に期待できる資格といえるでしょう。なお、現時点での認定介護福祉士の給与は、介護福祉士と大きく変わらない可能性があります。
介護施設における資格手当や評価の制度は多様なので、認定介護福祉士の給与も職場によって異なるでしょう。
高いスキルを持っているという証明になる
認定介護福祉士の資格を取得すれば、介護福祉士よりもさらに高度な知識とスキルを持っているという証明になります。認定介護福祉士は、介護職における最上位資格という位置づけなので、介護リーダーや施設長へのキャリアアップを目指している方は、取得しておくと良いかもしれません。
また、施設長候補や幹部候補としてほかの施設や事業所に転職する際に、認定介護福祉士の資格があると有利に働くでしょう。
認定介護福祉士になるには?
認定介護福祉士になるには、一定の条件を満たしたうえで、認定介護福祉士養成研修の全課程を修了しなくてはなりません。
ここでは、認定介護福祉士の資格を取得するための条件と、研修にかかる期間・費用、研修の申込み方法を紹介します。
認定介護福祉士の取得条件
認定介護福祉士の資格を取得するには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 介護福祉士としての実務経験が5年以上ある
- 介護職員が対象の現任研修の研修歴が100時間以上ある
- 研修実施団体の課すレポート課題や受講試験において、一定以上の成績を修めている(免除の場合あり)
- ユニットリーダーやサービス提供責任者としての実務経験を有することが望ましい
- 居宅および施設系サービスでの生活支援の経験を持つことが望ましい
現任研修の研修歴とは、「介護福祉士基本研修」「介護福祉士ファーストステップ研修」などを修了することです。
介護福祉士基礎研修は、介護過程について改めて学べる内容で、根拠のある介護を行うスキルを磨けます。主に、介護福祉士としての実務経験が2年未満の方が対象です。
介護福祉士ファーストステップ研修とは、小規模チームのリーダーを担う介護福祉士を育成をするための研修のこと。介護福祉士としての実務経験が2年以上ある方が対象です。
認定介護福祉士養成研修を受講するには、この介護福祉士基礎研修や介護福祉士ファーストステップ研修などを100時間以上受講する必要があります。
出典
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士になるには」(2025年1月29日)
日本介護福祉士会「生涯研修体系」(2025年1月29日)
認定介護福祉士養成研修の受講に必要な期間・費用
認定介護福祉士の養成研修を受講するために、期間と費用がどれくらいかかるかは、研修を実施する団体によって異なります。
たとえば、一般社団法人 京都府介護福祉士会が2023年から開催している認定介護福祉士養成研修では、研修は毎月2日間程度で、期間は2023年8月~2025年10月ごろまでの予定。2~3年かけて認定介護福祉士養成研修の全課程を修了するようです。
非会員の受講料は1日16,000円。ただし、一般社団法人京都府介護福祉士会の会員になることで会員価格が適用されると、受講費用は半額の8,000円になります。
期間中、毎月2日間受講すれば、非会員の場合86万円程度かかるでしょう。
上記は京都府の一例のため、自治体や主催団体によって、認定介護福祉士養成研修の受講にかかる費用は異なると考えられます。認定介護福祉士の資格を取得したい方は、国や自治体の補助金制度を活用したり、職場からの補助を得たりできれば、費用の負担を軽減できるでしょう。
なお、認定介護福祉士の資格は5年ごとの更新制で、更新には実務経験などの要件があります。
出典
一般社団法人 京都府介護福祉士会「令和5年 認定介護福祉士養成研修案内及びプログラム」(2025年1月29日)
認定介護福祉士養成研修の申込方法
認定介護福祉士養成研修は、一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構が指定した団体で実施しています。
主な実施先は、都道府県の介護福祉士会や社会福祉協議会、大学などです。研修を受けたい方は、まずは居住地の介護福祉士会に問い合わせてみると良いでしょう。
個人ではなく事業所単位で申し込む場合もあるため、養成研修受講を検討されている方は勤め先に相談するのも1つの方法です。
認定介護福祉士養成研修のカリキュラム
お伝えしているように、認定介護福祉士養成研修とは、認定介護福祉士になるために受講する研修です。認定介護福祉士養成研修は「認定介護福祉士養成研修I類」と「認定介護福祉士養成研修II類」で構成され、この2つを修了しなくてはなりません。すべてのカリキュラムを合わせると600時間なので、研修が修了するまでに1年半ほどかかります。なお、受講スケジュールは実施団体によって異なるので、事前にしっかり確認しておきましょう。
認定介護福祉士養成研修I類のカリキュラム
認定介護福祉士養成研修I類は、医療やリハビリ、福祉用具、住環境、認知症などについて学べる以下のようなカリキュラムになっています。
- 認定介護福祉士概論
- 疾患・障害等のある人への生活支援・連携I
- 疾患・障害等のある人への生活支援・連携II
- 生活支援のための運動学
- 生活支援のためのリハビリテーションの知識
- 自立に向けた生活をするための支援の実践
- 福祉用具と住環境
- 認知症のある人への生活支援・連携
- 心理的支援の知識技術
- 地域生活の継続と家族支援
- 認定介護福祉士としての介護実践の視点
- 個別介護計画作成と記録の演習
- 自職場事例を用いた演習
認定介護福祉士養成研修I類の修了にかかる時間は、講義と演習を合わせて345時間です。
認定介護福祉士養成研修II類のカリキュラム
認定介護福祉士養成研修II類は、養成研修I類で得た知識をもとに、介護実践力や応用力、サービス管理やマネジメントについて学べるカリキュラムとなっています。
- 疾患・障害等のある人への生活支援・連携III
- 地域に対するプログラムの企画
- 介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理
- チームマネジメント
- 介護業務の標準化と質の管理
- 法令理解と組織運営
- 介護分野の人材育成と学習支援
- 応用的生活支援の展開と指導
- 地域における介護実践の展開
認定介護福祉士養成研修II類の修了にかかる時間は、講義と演習合わせて255時間です。
出典
一般社団法人 認定介護福祉士認証・認定機構「認定介護福祉士養成研修について」(2025年1月29日)
認定介護福祉士に関する質問
ここでは、認定介護福祉士に関してよくある質問に回答します。「認定介護福祉士を目指すか迷っている」という方は、参考にしてください。
認定介護福祉士の取得方法は?
認定介護福祉養成研修の受講要件を満たし、全カリキュラムを修了すれば、認定介護福祉士を取得できます。養成研修の受講要件は、介護福祉士の実務経験5年以上や介護福祉士ファーストステップ研修の修了などです。
詳しくはこの記事の「認定介護福祉士になるには?」で解説しているので、ぜひご確認ください。
認定介護福祉士は意味ないって本当ですか?
認定介護福祉士を取得すると、高度な介護技術・知識を有していることを証明できるというメリットがあります。管理者や施設長を目指す場合は、認定介護福祉士の資格があるとアピールにつながるでしょう。また、認定介護福祉士の知名度が上がっていけば、待遇が良くなる可能性も考えられます。
認定介護福祉士を取得するメリットについては、この記事の「認定介護福祉士になるメリット」をご覧ください。
認定介護福祉士の年収はどれくらいですか?
認定介護福祉士の年収は、介護福祉士と同じくらいと考えられます。厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.355)」によると、勤続年数5~9年の介護福祉士の平均月収は319,370円。12を掛けて算出した平均年収は3,832,440円です。認定介護福祉士の年収は、経験年数などによって異なりますが、相場は380万円前後と考えて良いでしょう。職場によっては、専門性の高さや携わる業務範囲の広さを考慮し、手当を付与する場合もあるかもしれません。
「認定介護福祉士を取ると年収は上がる?資格取得の方法やメリットを解説」の記事でも、認定介護福祉士の収入について触れています。
出典
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年1月29日)
まとめ
認定介護福祉士は、介護福祉士の上位資格にあたり、高い介護スキルがあることを証明できる資格です。研修は600時間かかるため、1年半もしくはそれ以上の時間がかかりますが、介護スキルを高めてリーダーとして活躍したい方にはぴったりの資格でしょう。
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