
この記事のまとめ
- 特養とグループホームの違いは、利用者さんの介護度や夜勤の仕事内容など
- 特養かグループホームで働くなら、特徴や違いを知り自分に合うほうを選ぼう
- 特養やグループホームは、無資格・未経験から勤務できる
「特養とグループホーム、働くならどっちが良い?」と迷っている方もいるかもしれません。就職・転職の際は、それぞれの施設の特徴を知り、自分に合う職場を選ぶことが大切です。この記事では、特養とグループホームの仕事内容や給料、夜勤の違いを解説します。特養とグループホームに向いている人の特徴や、その他の介護施設・事業所の種類もご紹介するので、働く施設選びの参考にしてください。
特養とグループホームの違いは?
特養とグループホームは、介護の必要な高齢者が入居する施設である点は共通しているものの、施設や利用者さんの特徴、介護職員の仕事内容などに違いがあります。どのような違いがあるのか、施設ごとにみていきましょう。
特養とは
特養は「特別養護老人ホーム」の略称で、老人福祉法上の呼び方です。介護保険法上は、「介護老人福祉施設」といいます。
特養の特徴
特養は、要介護3以上の高齢者を対象とした介護施設です。要介護1・2の方も、同居家族がいない場合や在宅での介護が難しい場合は、特例で入居できることも。社会福祉法人などが運営主体となることが多いため、経営が比較的安定している傾向にあります。
特養には、2~4人程度の利用者さんが入居する居室で構成される「従来型(多床室)」、リビングスペースを中心に個室が並ぶ「ユニット型」という施設形態があります。
特養の介護職員の仕事内容
特養で働く介護職員の主な仕事は、利用者さんの身体介護と生活援助です。身体介護とは身体に直接触れて行う介護のことで、食事や入浴、排泄、移動などの介助を指します。生活援助は、掃除や洗濯など、利用者さんの身の回りのお世話を行うことです。そのほか、看護師と連携しながら健康管理も行います。
介護度が高い方が多いため、業務における身体介護の割合が高く、一定の体力が必要です。また、24時間体制で介護サービスを行うため夜勤があります。
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グループホームとは
グループホームとは「認知症対応型共同生活介護事業所」のことで、要支援2以上で医師から認知症の診断を受けた高齢者が入居する施設を指します。
グループホームの特徴
グループホームは、1ユニット最大9名単位で生活する小規模な施設で、ユニット数は1~3個です。掃除や調理などの家事を利用者さんと協力して行うなど、自立支援を重視した介護を行い、認知症の進行や身体機能の低下を防ぐ役割があります。
グループホームの介護職員の仕事内容
グループホームの介護職員の仕事内容は、身体介護や家事の手助けを行う生活援助、機能訓練です。特養より自立度が高い利用者さんが多い傾向にあるため、身体介護や生活援助は必要性を見極めて行います。また、認知症の進行を防ぐ支援の一環として、リハビリやレクリエーションを通した機能訓練が行われます。
グループホームも、利用者さんが入居して生活するため、特養と同様に夜勤のある施設です。
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特養とグループホームでの夜勤の違い
夜勤での人員配置は、特養の場合で利用者さん25名に職員1名、グループホームの場合で利用者さん9名に職員1名となっており、グループホームのほうが手厚いのが特徴です。仕事内容として、消灯前の食事介助や口腔ケア、更衣・就寝介助などは共通ですが、消灯後は施設によって忙しさが異なります。
特養は、夜間にオムツ交換が必要な利用者さんの人数が多く、身体介護の割合が高いようです。自立している方が少なければ、コール対応に追われることは少ないですが、身体介護を少人数の職員で行うため体力的な負担がかかります。
一方、グループホームは身体介護が必要な方は特養より少ない傾向があるため、見守りがメインです。ただし、眠れない利用者さんがいると呼び出し対応に追われることも。夜間にひとり歩きをする利用者さんがいると転倒するおそれがあるので、緊張感をもって見守りをする必要があり、精神的な負担がかかることもあるでしょう。
特養とグループホームの夜勤にはそれぞれの大変さがあります。新人の介護職員のうちは日勤業務から覚え、仕事に慣れてきたタイミングで夜勤のシフトに入るのが一般的です。いきなり夜勤から任せられることはないので安心してくださいね。
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特養かグループホームで働くならどちらが良い?
特養とグループホームはそれぞれに特徴があり、どちらで働くのが良いとは一概には言い切れません。ここでは、特養とグループホームそれぞれの仕事に向いている人の特徴を紹介するので、転職先を選ぶ参考にしてみてください。
特養で働くのに向いている人
まずは、特養で働くのに向いている人の特徴を紹介します。
身体介護のスキルをつけたい人
特養で働くのは、介護スキルの向上を目指したい人に向いているでしょう。特養は利用者さんだけではなく介護職員の人数も多いので、分からないことがあったらすぐに教えてもらいやすい環境です。経験豊富なベテランスタッフも多くいるので、介護技術を先輩から学べるでしょう。
要介護度の高い利用者さんが多く、身体介護の機会が多いため、特養で働くことで介護スキルの底上げが狙えます。
看取りまで利用者さんの生活を支えたい人
長期的に利用者さんと向き合って介護をしたい人も、特養で働くのに向いています。特養は長期利用の利用者さんが多く、ときには看取りを行うこともあるようです。利用者さんの余生に寄り添い、じっくりサポートを行いたい方は、特養への転職を考えてみても良いでしょう。
給与条件や待遇を重視する人
特養のほうがグループホームより給与が高い傾向にあります。厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.122)」によると、2022年9月時点で介護職員処遇改善支援補助金を取得している、特養とグループホームの平均給与(月給制の者)は以下のとおりです。
常勤 | 非常勤 | |
特養(介護老人福祉施設) | 34万8,040円 | 21万1,260円 |
グループホーム(認知症対応型共同生活介 護事業所) | 29万1,080円 | 20万410円 |
介護施設全体の平均額 | 31万7,540円 | 20万9,540円 |
引用:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.122)」
特養とグループホームを比べると、特養のほうが常勤の場合5万円以上、非常勤の場合は1万円ほど給与が高い結果となっています。介護施設全体の平均額と比べても、特養の給与は高いようです。
出典
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2025年3月17日)
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グループホームで働くのに向いている人
グループホームで働くのに向いている人はどのような人か、以下で確認してみましょう。
認知症介護を学びたい人
グループホームは認知症の方が入居する施設なので、認知症の利用者さんへの対応やコミュニケーション方法を学べます。認知症の利用者さんの対応をするときは、しっかりとコミュニケーションを取り、一人ひとりのニーズや気持ちを考えることが大切です。考える中で認知症の方への対応の引き出しを増やせるので、ほかの施設でも活かせるスキルが身につくでしょう。
グループホームは、ご家族に認知症の方がいて、支援方法を学びたい人にもおすすめの職場です。
利用者さんの自立支援に関わりたい人
グループホームは特養と比べて、要介護度の低い利用者さんが入居するため、できることはご自身でしてもらう自立支援を重視します。
利用者さんをよく観察したうえで、できそうなことは必要以上に手助けしない、難しいことは手助けするという判断が必要です。こうした自立支援をとおして、利用者さんができなかったことができるようになったとき、介護職として大きなやりがいを感じられるでしょう。
一人ひとりの利用者さんと向き合いたい人
グループホームでは、レクリエーションや機能訓練をとおして、利用者さんと交流する機会が多くあります。コミュニケーションを積極的に取ることは、利用者さんの認知症の進行予防にも有効です。利用者さんの人数が少ないので、一人ひとりとしっかりコミュニケーションを取る機会が多いことも、グループホームの特徴といえます。
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特養やグループホームで働くのに資格や経験は必要?
特養やグループホームでは、無資格・未経験から勤務可能です。介護業界は未経験で入職する人が多いので、未経験者の受け入れに慣れている施設も少なくありません。介護経験や資格がない方は、教育体制が充実している施設や資格取得支援制度がある施設を選ぶと良いでしょう。
なお、無資格で介護職になった場合、入職から1年以内に「認知症介護基礎研修」以上の資格を取得する必要がありますが、認知症介護基礎研修はオンラインで1日で修了できる難易度です。
無理なく着実に学びたい人は、グループホームで介護度が低い方の介助から基礎を学ぶのがおすすめ。基礎が身についてから特養など介護度が高い利用者さんの多い施設に転職することで、幅広い介護技術を身につけられます。
一方で、どこに行っても通用する介護スキルをいち早く身につけたい方は、特養で身体介護の経験をバリバリ積むという選択肢もあるでしょう。ただし、施設によっては早く業務を覚えることや効率を求められる可能性も。無資格・未経験で転職すると仕事を大変に感じる場合があるため、不安な方は教育体制を確認したうえで職場を選びましょう。
即戦力を求める施設は、「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」など、資格要件を設けている場合もあります。資格を取ると転職に有利になったり、転職先の選択肢が広がったりするため、時間に余裕があれば取得しておくのがおすすめです。
介護職員初任者研修は介護の基礎知識や技術を身につけられる資格で、最短1ヶ月で取得できます。詳しくは、「介護職員初任者研修とはどんな資格?受講費用を抑える方法や取得のメリット」をご覧ください。
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レバウェル介護の資格スクール特養・グループホーム以外の主な介護施設・事業所
特養・グループホーム以外にも、さまざまな介護施設・事業所があります。特養とグループホーム以外の主な介護事業所を、以下でチェックしてみましょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設は、退院後すぐに自宅での生活に戻るのが難しい方が入居し、在宅復帰を目指して機能訓練やリハビリを行う施設です。
医師や看護師が常駐しているほか、リハビリのために理学療法士や作業療法士、言語聴覚士も在籍しています。他職種と連携しながら介護以外の観点も学びたい方や、在宅復帰の支援をしたい方に向いているでしょう。
老健に興味がある方は、「老健とは?特徴をわかりやすく解説!入所条件やほかの介護施設との違い」もぜひご覧ください。
有料老人ホーム
有料老人ホームは、民間企業が運営する施設です。介護職員が常駐して24時間介護サービスを提供する「介護付き有料老人ホーム」、食事の提供や家事代行など生活支援をメインにサービス提供する「住居型有料老人ホーム」、自立した生活を送る高齢者向けの「健康型有料老人ホーム」に分かれています。
施設により利用者さんの介護依存度や医療依存度、規模が異なるのが特徴です。身体介護がメインの施設もあれば、生活支援やレクリエーションが活発な施設もあるので、転職前にしっかり情報収集することが大切といえます。
詳しくは、「有料老人ホームの仕事内容は何?介護職員の1日や働くメリット、給料を解説」をご覧ください。
デイサービス
デイサービスは「通所介護」とも呼ばれます。利用者さんが日帰りで通い、食事の提供や入浴、機能訓練などのサービスを受ける介護施設です。利用者さんの自宅から施設までの送迎も行っています。利用者さんの健康維持や社会参加だけでなく、介護を行っているご家族の負担軽減を図ることも、デイサービスの重要な役割です。
比較的介護度が低い方が多い傾向があり、レクリエーションやイベントに力を入れている施設もあります。そのため、「利用者さんと一緒に楽しい時間を過ごしたい」という方におすすめです。
より詳しく知りたい方は、「デイサービスの仕事内容は?介護職の役割と1日の流れを解説」の記事も参考にしてくださいね。
訪問介護事業所
訪問介護は、介護の必要な方の自宅へ介護スタッフが出向き、1対1で支援を行う介護サービスです。訪問介護を行う介護スタッフは「ホームヘルパー」や「訪問介護員」と呼ばれます。食事介助・入浴介助・排泄介助といった身体介護に加え、掃除や洗濯、買い物代行といった生活援助も仕事内容です。
利用者さんの介助を行うだけでなく、介護を行うご家族の相談に乗りアドバイスすることもあります。ほかの職員に気を遣わず自分のペースで介護がしたい方や、個別ケアを大切にしたい方に向いているでしょう。
詳しくは、「ホームヘルパー(訪問介護員)とは?仕事内容や必要な資格、給料を解説」をご覧ください。
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特養とグループホームに関するよくある質問
ここでは、特養とグループホームに関するよくある質問にお答えします。
働きやすい介護施設の特徴は?
教育体制・研修制度が整っている施設や大規模な施設、未経験・無資格OKの施設は、比較的働きやすい介護施設といえるでしょう。この記事で紹介した特養は、職員や利用者数が多く、教育やフォローを受けやすい環境のため、介護施設の中でも働きやすいと感じる方もいるかもしれません。詳しくは、「介護職が働きやすい施設とは?仕事内容や未経験者が良い求人を見つける方法」を参考にしてみてください。
グループホームから特養への転職は可能ですか?
グループホームから特養へ転職することは可能です。特養とグループホームは、業務内容や利用対象者に共通する部分があり、転職したら活かせる経験が多いでしょう。グループホームから特養に転職する場合、介護を行う利用者さんの要介護度が上がる可能性があるため、より介護技術が身につきやすいといえます。特養は利用者さんと介護職員の人数が多く、ベテラン職員から学べることも多いので、足りない知識やスキルがあっても働きながら身につけていけるでしょう。
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まとめ
特養とグループホームでは、介護を必要とする高齢者を対象に、介護職員が身体介護や生活援助を行っています。特養には介護度の高い利用者さんが多く、豊富な介護スキルが求められるため、教育体制が整っていることが多いようです。
グループホームは認知症を患う高齢者の方が入居しています。介護職員の役割は、リハビリやレクリエーション、機能訓練を交えながら、利用者さんの生活をサポートすることです。施設の特徴や仕事内容をしっかり理解して、自分に合う職場を選ぶと良いでしょう。
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