
この記事のまとめ
- デイサービスの人員基準は、施設の利用者数によって異なる
- 人員基準を下回ると、基本報酬の減算や行政からの指導といった処分を受ける
- 人員基準を満たすには、職員の定着率を上げる環境作りが有効
「デイサービスを開業したいけど、人員基準が分からない…」という方もいるでしょう。デイサービスには、管理者や生活相談員、介護職員などの職種を配置する必要があります。本記事では、デイサービスの職種ごとの人員配置基準をまとめました。人員基準を下回るとどうなるかや、基準を満たすための対策もご紹介しています。デイサービスのマネジメントに携わりたい方は、ぜひご覧ください。
デイサービスとは簡単にいうとどんな施設?通所介護の種類や費用を解説!デイサービス(通所介護)に必要な人員基準
デイサービスを運営するにあたっては、厚生労働省が定めた人員配置基準を満たさなければいけません。厚生労働省の「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護 (改定の方向性)(p.28)」によると、配置が必要な職種は以下のとおりです。
職種名 | 配置基準 |
管理者 | 事業所に1人(常勤) |
生活相談員 | 事業所に1人(専従) |
看護職員 | 利用者数が10名以上の事業所では1人以上 |
介護職員 | 利用者数が15名以下の事業所では1人以上 利用者数が16名以上の事業所では 「(利用者数-15名)÷5+1」 |
機能訓練相談員 | 事業所に1人以上 |
参考:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護 (改定の方向性)(p.28)」
職員の配置人数は、デイサービスに通う利用者さんの数によって異なります。以下に、職種ごとの配置基準を詳しくまとめました。
管理者
どの形態の介護事業所にも共通して配置が義務付けられているのが、管理者です。施設の利用定員に関わらず、各事業所には常勤の管理者を1人配置しなければなりません。
一般的にデイサービスの管理者に資格要件はありませんが、業務をこなすには、介護についての深い知識やスキルが求められます。事業所や自治体が要件を定めている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。また、管理者は、生活相談員や機能訓練指導員、看護職員、介護職員などの職種と兼任できます。
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生活相談員
生活相談員は、1つのデイサービスにつき専従で1人以上の配置が義務付けられています。生活相談員の要件は自治体ごとに定められていますが、一般的には以下のような資格が条件となることが多いようです。
- 社会福祉士
- 精神保健福祉士
- 社会福祉主事
生活相談員に従事するには、社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事など、相談援助に特化した資格の取得が求められる傾向にあります。このほか、一定の実務経験がある介護福祉士やケアマネジャーが生活相談員の要件に含まれる自治体もあるようです。
デイサービスで働く生活相談員の仕事内容は、サービスを利用する方やその家族の相談に乗り、日常生活の改善やサービスの利用を支援することです。また、利用者さんの身体的・精神的状態を把握し、関係者へ情報共有するという役割もあります。通所介護計画書の作成に関わったり、サービス担当者会議に参加したりなど、マネジメント業務に携わることも多いようです。
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看護職員
利用者さんが10名以上のデイサービスでは、1人以上看護職員を配置する必要があります。利用者さんの人数が10名以下の地域密着型通所介護事業所では、看護職員か介護職員のいずれかを1名以上配置することが、配置基準です。デイサービスには看護職員の配置義務がありますが、常勤ではなくても良いことになっています。
看護職員として働くには、「看護師」や「准看護師」の資格が必要です。デイサービスで働く看護職員の業務範囲は、バイタルチェックやケガの処置といったケアに加え、医師との連絡、救急時の対応など、幅広い傾向にあります。事業所によっては、利用者さんの介助やレクリエーションを担当することもあるでしょう。
介護職員
デイサービスの介護職員の人員については、「利用者数が15名の事業所では1人以上」、「 利用者さんの数が15名を超す場合、1名増すごとに0.2を加えた数以上」の配置が義務付けられています。利用者さんの人数に応じた介護職員を配置することで、質の高い介護サービスを提供可能です。利用者さんが16名以上のデイサービスでは、 「(利用者数-15)÷5+1」 という計算式で、必要な介護職員の人数を算出しましょう。
なお、デイサービスの介護職員になるための資格要件はありません。介護職員が複数配置されていることや夜勤がないことから、無資格・未経験の方も働きやすいという特徴があります。デイサービスで働く介護職員の仕事内容は、入浴介助や食事介助、排泄介助、レクリエーションなど。比較的介護度が軽い利用者さんの身体介護や見守りを行うことが多いようです。
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機能訓練指導員
機能訓練指導員は、1つのデイサービスにつき1名以上配置することが義務付けられています。配置時間の定めはありません。機能訓練指導員として働くには、以下のいずれかの資格が必要です。
- 作業療法士
- 理学療法士
- 言語聴覚士
- 柔道整復士
- あん摩マッサージ師
- はり師またはきゅう師(6ヶ月以上の実務経験が必要)
- 看護師
- 准看護師
デイサービスで働く機能訓練指導員の役割は、利用者さんの身体機能の維持・向上を目的として機能訓練を実施することです。具体的な仕事内容としては、歩行訓練やマッサージ、筋力トレーニング、レクリエーションの実施などが挙げられます。また、身体機能評価、機能訓練計画書の作成、適切な福祉器具の選択、介護職員に対する介助方法の提案・指導なども含まれます。
出典
厚生労働省「第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(2024年5月24日)公益社団法人「日本機能訓練指導員協会」(2024年5月24日)
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デイサービス(通所介護)で人員配置基準を下回るとどうなる?
デイサービスで人員配置基準を満たせないと、人員基準欠如減算で基本報酬が減ったり、行政から処分を受けたりすることがあります。それぞれ確認してみましょう。
人員基準欠如減算で基本報酬が減るケース
介護事業所の看護職員または介護職員の配置数が人員基準を下回った場合、人員基準欠如減算の処分を受けます。
厚生労働省の「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護(改定の方向性)(p.29)」によると、人員基準欠如が生じた場合、翌月または翌々月から再度人員基準を満たした月まで、「利用者さん全員に基本報酬の70%を算定する(30%減算)」ことになります。
なお、人員基準欠如減算は、看護職員と介護職員のみが対象です。管理者や生活相談員の人員が不足する場合は、「人員基準違反」となるので注意しましょう。
出典
厚生労働省「第229回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(2024年5月24日)
行政から指導や処分を受けるケース
人員基準を下回り続けた場合、自治体から職員の増員や利用定員の見直し、休業といった指導を受ける可能性があります。また、定期的に行われる実地指導で人員基準違反が発覚した場合には、事業所の指定が取り消されるリスクもあるので、注意が必要です。
デイサービス(通所介護)の人員基準を満たすための対策
職員の急な欠勤や退職などで、人員配置基準を満たせなくなる場合があります。ここでは、デイサービスが配置基準を満たすための対策をまとめました。
既存の職員が働きやすい環境を作る
職員の離職率の高さは、慢性的な人員不足に繋がります。安定的に人員配置基準を満たすためには、職員の定着率を上げる対策を講じる必要があるでしょう。たとえば、職員と定期的に面談をすることで、相談しやすい環境作りが可能です。スタッフの人間関係や仕事量を把握できれば、働きやすい職場環境の整備を行えます。
また、ほかの施設との連携や新しい職員の受け入れに向けて準備しておくといった、人員確保のための対策を打っておくと、退職者が出ても配置基準を満たせます。
急な欠員に対応できる人員を揃える
デイサービスの配置基準を満たすためには、兼務可能または専従ではなくてもいい職種を把握しておくことが重要です。たとえば、看護職員は、病院やクリニックのような医療機関と連携していれば専従ではなくても良いことになっています。
兼務可能な職種や、専従配置が必要ではない職種を把握しておけば、人手が不足しがちなときでも、人員配置基準にうまく対応できるでしょう。
長く働ける人を採用する
人員基準を満たしてデイサービスを運営するためには、採用時のミスマッチ対策を行い、短期離職を防ぐことも必要です。求人を出す際に、業務内容や残業時間、職場の雰囲気などを具体的に記載すると、応募者に求める人物像が伝わりやすいでしょう。
また、職員が退職した際に、退職理由を把握することも重要です。人間関係や職場環境に問題がある場合は、改善することで職員の定着率を上げられるでしょう。
感染症対策をする
感染症対策をすることで、急な欠勤を予防できるでしょう。複数の職員と利用者さんが同じ空間で活動するデイサービスは、集団感染のリスクが高いといえます。職員が同時に何人も欠勤する事態になれば、人員基準を満たせなくなるので注意が必要です。
また、事業所内での感染症の流行は、利用者さんやそのご家族にも影響します。感染症の蔓延を防ぐためには、定期的な換気や備品の消毒、マスクの着用など、しっかりと対策を行うことが重要です。
2015年度の改正に伴うデイサービス(通所介護)の基準の緩和
ここでは、2015年度に行われた介護報酬改定による、デイサービスの運営基準の緩和について解説します。
看護職員の人員基準
制度改正前は、デイサービスでは看護師を専従で1人配置することが義務付けられていましたが、人手不足を理由として2015年に人員基準が緩和されました。
厚生労働省の「平成27年度介護報酬改定の骨子(p.23)」によると、改正後の人員基準では、病院や訪問看護ステーションなどの医療機関と連携している場合、看護師はデイサービスの業務に専従する必要はありません。
常勤時間数
デイサービスの運営基準が緩和される前は、職種に限らず、週に32時間以上の労働が「常勤」の基準とされていました。制度改正後は、職員に介護や育児などの事情がある場合は、週に30時間の労働でも常勤として認められています。
生活相談員の条件
制度が改正される前は、生活相談員の勤務時間として計算できるのは、事業所内での相談援助業務のみでした。しかし、制度改正後は、利用者さんの自宅に訪問して会議をする時間なども、勤務時間として認められるようになりました。生活相談員の業務範囲が広がったことで、より良いサービスの提供が可能になったといえるでしょう。
出典
厚生労働省「平成27年度介護報酬改定について」(2024年05月24日)
デイサービス(通所介護)の人員基準以外の運営条件
ここでは、デイサービスの人員基準以外の運営条件をご紹介します。人員配置だけではなく、設備や運営に関する基準もあるので、チェックしてみましょう。
デイサービス(通所介護)の設備基準
デイサービスを運営するには、厚生労働省が定める以下の設備基準を満たす必要があります。
設備 | 基準 |
食堂 | それぞれ必要な面積を有するもの |
機能訓練室 | 合計した面積が利用定員×3.0㎡以上 |
相談室 | 相談内容が漏洩しないよう 配慮されていること |
参考:厚生労働省「通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護」
利用者さんが安心してデイサービスを使えるよう、施設の広さや相談室の環境に関する設備基準が設けられています。指定通所介護事業所と指定居宅サービス事業所等が併設している場合、サービス提供に支障がなければ、共用することが可能です。また、上記のほかにも、洗面台やトイレのような設備や、消火器具といった備品も設備基準に含まれます。
出典
厚生労働省「第180回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料」(2024年5月24日)
デイサービス(通所介護)の運営基準
デイサービスでは、適切な介護サービスを提供するために、運営基準を満たす必要があります。運営基準として、提供するサービスや手続きの方法、情報に関する規定が設けられているようです。
たとえば、利用者さんにサービスを提供する前に、ご本人やそのご家族に重要事項説明書を通してサービス提供の説明を行うことが義務付けられています。また、提供したサービスの内容の記録も必要です。
デイサービスを営業するためには、さまざまな条件を満たさなければいけません。そのため、開業したい方は、運営基準をしっかりと確認しておきましょう。
出典
e-GOV 法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年厚生省令第三十七号)」(2024年5月24日)
デイサービス(通所介護)の人員基準に関してよくある質問
ここでは、デイサービス(通所介護)の人員基準に関してよくある質問にお答えします。「デイサービスでマネジメントに携わっている」「デイサービスの開業を目指している」という方は、ぜひご覧ください。
利用定員10人以下のデイサービスの人員基準は?
デイサービスを運営するには、厚生労働省が定めた人員を配置する必要があります。配置が必要な職種は、管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練相談員です。利用者数が10名以下の地域密着型通所介護事業所では、看護職員か介護職員のいずれかを1人以上配置することが義務付けられています。デイサービスの人員基準については、「デイサービス(通所介護)に必要な人員基準」で解説しているので、チェックしてみてください。
デイサービスの人員基準に違反するとどうなりますか?
人員基準を満たしていないデイサービスは、「人員基準違反」として指摘を受けます。違反が発覚した場合、新たな利用者さんの受付停止や、介護保険の指定取消といった処分を受ける可能性があるでしょう。また、介護報酬の返還を求められたり行政処分を受けたりなど、厳しい罰則が科される場合もあるので、注意が必要です。デイサービスの人員基準違反については、「デイサービス(通所介護)で人員配置基準を下回るとどうなる?」をご一読ください。
まとめ
デイサービスには、管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練相談員の配置が必要です。必要な配置人数は、利用者さんの数で決まります。たとえば、利用者数が10名以下の地域密着型通所介護事業所では、看護職員か介護職員のいずれか1人以上の配置が必要です。
人員配置基準を下回った場合、基本報酬が30%減算されます。人員基準を大幅に下回り続けると、行政から指導・処分が下ることも。事業停止のような重い処分もあるので、注意しましょう。
人員基準を安定して満たすには、職員の定着率を上げるための環境作りが大切です。人間関係の把握や入社時のミスマッチ対策など、職員が長く働けるように取り組みましょう。
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