
この記事のまとめ
- 介護福祉士からケアマネージャー(介護支援専門員)を目指す人は多い
- 介護福祉士からケアマネージャーになるには、5年以上の実務経験が必要
- 介護福祉士からケアマネジャーになると、仕事内容が変化する
介護福祉士からケアマネージャーへのキャリアアップを視野に入れているものの、実際はどのように目指したら良いか分からない人も多いはず。この記事では介護福祉士からケアマネージャー(介護支援専門員)になるための方法を解説します。また、介護福祉士からケアマネージャーになる際の注意点やケアマネに求められるスキルについても解説するので、介護職員として活躍の場を広げたいと考えている人は参考にしてみてください!
ケアマネジャー(介護支援専門員)とはどんな仕事?業務内容や役割を解説!介護福祉士からケアマネを目指す人は多い!
介護職員としてキャリアアップのために資格取得に励む人は多くいますが、介護福祉士を取得した後、さらにケアマネージャー(介護支援専門員)を目指す人も多々います。
以下は、ケアマネ試験の実施開始から令和2年度までに合格した人の職種とその構成比率(一部抜粋)です。
職種 | 人数 | 構成比率 |
保健師 | 27,918人 | 3.9% |
看護師・准看護師 | 170,952人 | 23.9% |
理学療法士 | 16,753人 | 2.3% |
作業療法士 | 9,950人 | 1.4% |
社会福祉士 | 45,612人 | 6.4% |
介護福祉士 | 316,440人 | 44.2% |
上記を見ると、これまでにケアマネ試験に合格した人の4割以上を介護福祉士が占めていることが分かります。さらに、令和2年度のみの結果を見ると、合格者のうち介護福祉士が占める割合は55.9%と5割を超えるほど。
介護施設に関わる職種の中でも特に、介護福祉士からケアマネージャーになるキャリアプランを選択する人が多いようです。
出典
厚生労働省「第23回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」(2021年08月03日)
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そもそもケアマネージャー(介護支援専門員)とは?
ケアマネージャー(介護支援専門員)は、介護を必要とする方に適切なケアを提案できる専門的な職種です。ケアマネージャーとして働くには、都道府県ごとの試験・研修を受け、介護支援専門員証の交付を受ける必要があります。
ケアマネージャーの主な仕事内容は、その名の通りケアマネジメントであり、介護ケアを必要としている方のケアプランの作成をすることです。また、市町村やサービス施設などと連絡調整をするなど、業務は多岐にわたります。
ケアマネの仕事は大きく分けて2種類
ケアマネージャー(介護支援専門員)は、勤務先の施設形態によって仕事内容や働き方がやや異なります。自身に合った働き方はどちらになるのか、あらかじめ把握した上で目指しましょう。
居宅ケアマネージャー
居宅介護支援事業所に勤めるケアマネは「居宅ケアマネ」と呼ばれ、利用者さんが自宅で自立した生活を送れるようにすることを目的としてケアプランを作成します。利用者さんや利用者さんのご家族の要望に沿ってケアプランを作成し、内容を利用者さんに確認したら、居宅サービス事業者に引き継ぎます。
また、施設入所が必要な利用者さんの場合は介護施設の紹介も実施。各施設や機関との連携も居宅ケアマネの大切な仕事です。
施設におけるケアマネージャー
特養や老健をはじめとする介護施設に勤めるケアマネは「施設ケアマネ」と呼ばれ、利用者さんが施設内で快適に過ごすことを目的としたケアプランを作成します。施設ケアマネの場合、利用者さんやご家族の希望だけでなく、施設方針にも則ったケアプランを作成しなければなりません。
施設ケアマネは利用者さんの課題などを理解し、施設内で行えるサービスやケアを組み合わせて適切なものを提案します。介護職員や看護師、機能訓練指導員など施設内で活躍しているあらゆる職種との連携が肝心です。
介護福祉士からケアマネージャーになるためのステップ
介護福祉士からケアマネージャーになるためには、指定されている実務経験期間を経た上で
試験や研修をクリアしなくてはなりません。
ここからは、介護福祉士からケアマネージャーになるための4つのステップを紹介します。現在介護福祉士でこれからケアマネージャーを目指す方はもちろん、将来的に資格取得を考えている介護職員さんも参考にしてみてくださいね。
1.試験の受験要件を満たす
ケアマネージャー(介護支援専門員)になるためには、介護支援専門員実務研修受講試験に合格する必要があるため、まずはこの試験の受験要件を満たさなくてはなりません。ケアマネの試験を受けるためには、一定以上の実務経験が必要です。受験応募の際「実務経験証明書」を提出することで、実務経験があることを証明できます。
なお、求められる実務経験は単に介護職員としてのものではなく、職種も指定されているので注意しましょう。ケアマネ試験の受験要件として設定されている実務経験の満たし方は2パターンあります。以下で詳しく解説するので、自身が満たせるのはどちらの条件か確認しておきましょう。
指定の国家資格を取得して実務経験を積む方法
介護支援専門員実務研修受講試験の受験には、国家資格を取得し、保有資格に基づく業務に5年以上かつ900日以上従事する必要があります。対象の国家資格は以下の通りです。
医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士(管理栄養士を含む)・精神保健福祉士
上記いずれかの免許の登録日以降が実務経験の対象となります。
相談援助業務にて実務経験を積む方法
ケアマネ試験は、国家資格ではなく指定の相談援助業務に従事することでも受験資格が得られます。国家資格の保有者と同様、上記の業務に従事する期間が、通算して5年以上であり、かつ当該業務に従事した日数が900日以上であることが要件となります。対象の相談援助業務は以下の通りです。
- 介護施設の支援相談員
- 障がい者施設の相談支援専門員
- 生活困窮者自立相談支援事業の主任相談支援員
対象の国家資格と対象の相談援助業務の両方を合算した実務経験日数でも可能です。
試験日の前日までの日数をカウントできるため、申し込み時点で日数が足りなくても「実務経験見込証明書」を提出すれば、受験は可能となります。
なお、ケアマネ試験の受験要件は都道府県ごとに異なる場合もあるため、応募をする前に必ず確認しましょう。
2.介護支援専門員実務研修受講試験に合格する
受験資格を満たしていれば、いよいよケアマネ試験を受けることができます。
介護支援専門員実務研修受講試験は、介護支援分野や保険医療福祉サービス分野から出題されます。合格ラインを満たすことができるように勉強に励みましょう。
勤務地または住所地で受験する
受験要件のほかに、もう一つ確認しておかなくてはならないことがあります。それは「勤務地と所在地」です。
介護支援専門員実務研修受講試験は、各都道府県が取りまとめて実施されます。したがって、受験する都道府県に勤務地がある、もしくは所在地でなければ、その受験地での受験は不可能となります。
間違って申し込んで受付期間をすぎた場合、受験できなくなることもあるためしっかりと確認しましょう。
3.介護支援専門員実務研修を受ける
介護支援専門員実務研修受講試験に合格した後は、「介護支援専門員実務研修」を受講します。
介護サービスの基礎やケアプランの作成など、専門的な知識や技術を学ぶ講習で、国が定めたカリキュラムに沿って計87時間以上の実務研修を受ける必要があります。なお、介護支援専門員実務研修は都道府県によって実施時期が異なるため注意しましょう。
出典
厚生労働省「介護職員・介護支援専門員」(2021年08月03日)
4.介護支援専門員証の交付を受ける
介護支援専門員実務研修を修了したら、「介護支援専門員資格登録簿」への登録申請をします。登録後、介護支援専門員証が交付されてケアマネ業務が可能となります。
この介護支援専門員証の有効期間は5年間で、有効期間が満了する月の3ヶ月前に必要書類が郵送されます。期間内に更新するようにしましょう。
万が一、更新を忘れてしまった場合は、介護支援専門員の資格は失効してしまうため、ケアマネを名乗ることはできなくなります。失効してしまった場合は、再研修を受けることで再度ケアマネとして業務可能です。
介護福祉士からケアマネージャーになる際の注意点
介護福祉士からケアマネージャーを目指す際に注意しておくべき点が2つあります。以下で解説するポイントを理解した上で、ケアマネージャーを目指しましょう。
合格率が低く、試験の難易度が高い
まず、介護支援専門員(ケアマネージャー)の試験難易度は高いことを頭に入れておきましょう。先述の通り、介護福祉士からケアマネージャーになるには、試験に合格しなくてはなりません。
介護支援専門員実務研修受講試験は国家試験ではないものの、令和2年度では受験者数46,415人に対し合格者数は8,200人と少なく、合格率はわずか17.7%です。受験要件を満たすのにも5年かかる上、合格率も10%代とかなり低いため、介護支援専門員は狭き門と言えます。
働きながらケアマネを目指す場合、いかに効率良く試験勉強ができるかどうかがカギとなるでしょう。
出典
厚生労働省「第23回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」(2021年08月03日)
仕事内容が変化する
介護支援専門員(ケアマネージャー)として働く場合、介護福祉士とは業務内容がガラッと変わります。介護福祉士は、主に利用者さんの自宅や施設での直接的な身体介護や生活支援を行いますが、ケアマネージャーはケアプラン作成や各施設・機関との連絡調整など事務的な作業が主な仕事です。ケアマネの中には介護職員としても働いている人がいますが、兼務するかどうかは勤務先によって異なります。
ケアマネジメントのみに関わりたいという方であれば問題ありませんが、利用者さんのケアに直接関わりたいという方は兼務できる勤務先を選ぶ必要があります。
自身の希望する働き方に適しているのかを考えてから、ケアマネージャーとしての一歩を踏み出してみましょう。
ケアマネージャーに求められる4つのスキル
ケアマネージャーになるために必要なことは、実務経験や試験への合格だけではありません。利用者さんや利用者さんのご家族、介護施設の間に入って連携を取ることや、利用者さんに合わせたケアプランの作成など、多岐にわたる業務を円滑に行うためのスキルも必要となります。
1.多様な業務をこなす力
ケアマネの業務範囲は広いため、多様な業務を同時にこなすマルチタスク能力が求められます。ケアマネは、ケアプランの作成や連絡調整業務に加え、介護保険サービスの利用で発生する介護給付金の管理をしたり、食事に困っている人への配食の紹介をしたり、生活困窮者には生活保護の申請の手助けをしたりするなど、介護ケアの枠にとらわれずに業務しなくてはなりません。
イレギュラーなことが起きても、迅速に対応できる判断力と行動力も必要となります。また、事業所には多数の利用者さんがいるため、管理能力も必要です。
2.コミュニケーション能力
ケアマネージャーの業務において重要となるのが、コミュニケーション能力です。
ケアプランを作成する際は、利用者さんやそのご家族と面談をします。そして、そのケアプランを元に、介護施設や介護士と連携をとります。利用者さんだけでなく関係各所とも連絡を取り続けることになるため、ケアマネージャーにとってコミュニケーションスキルはなくてはならないスキルだと言えるでしょう。
また、ケアプラン作成時のヒアリングでは、利用者さんやご家族の気持ちを汲み取る力も必要となります。
3.相談者に合わせて適切な判断をする力
ケアプランの作成においては、利用者さんごとに異なる状態や環境に合わせて適切なケアを考えなくてはなりません。その際には、物事を多角的に捉える判断能力が必要となります。
介護の現場においては専門的な介護・医療・保険の知識が必要となり、利用者さんに合ったケアプランを作成するには、「どのようなケアが有効なのか」「どの介護保険を利用するのが良いか」など的確に判断していくことが重要です。
4.パソコンスキル
介護福祉士からケアマネージャーになるとパソコンを使った事務作業が増えるため、パソコンスキルも必要です。ケアプランや諸々の手続きに必要な書類などはパソコンで作成することが多く、パソコン操作に慣れていない人は、つまずいてしまうことも。
介護福祉士からケアマネージャーになるにあたって、パソコン自体の操作はもちろん、WordやExcelなど事務業務でよく使われるツールの操作にも慣れておいたほうが良いでしょう。
介護職に関するよくある質問
介護職に関するよくある質問に回答します。「介護職って大変なの?」「介護職を辞めたい…」と疑問やお悩みがある方は、ぜひ参考にしてみてください。
介護職の仕事ってしんどいの?
職場の人間関係が悪かったり、夜勤が大変だったりすると、介護職の仕事がしんどいと感じる方が多いようです。ほかにも、人手不足による業務量の多さや職員間の格差などが原因になることも。しかし、仕事をしんどいと感じるかどうかは、施設の環境や人によって異なります。仕事内容を事前に確認し、職場見学をして自分に合った職場かどうか確認することが大切です。
「介護職で多い不満は?」で、介護職員が感じる不満を詳しく紹介しているのでチェックしてみましょう。
介護職を辞めたいときはどうすれば良いの?
介護職を辞めたいときは、辞めるリスクとリターンについてよく考えましょう。無理をしすぎて体調を崩してしまえば元も子もないので、耐えられないと感じたときは、早めに退職することが大切です。退職時は、上司に辞意を伝え、業務の引き継ぎをしっかりと行うことで円満に退職できるでしょう。退職までの流れは、「介護職をすぐ辞めるのはアリ?よくある退職理由や不安の対処方法を解説!」の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
介護福祉士からケアマネージャーを目指す人は多くいますが、ケアマネになるのは簡単ではなく、一定期間以上の実務経験や試験合格、研修の修了が必要です。ケアマネ試験(介護支援相談員実務研修受講試験)の受験要件は、対象の国家資格保有者として、もしくは相談支援専門員として5年以上かつ900日以上の実務経験があること。受験要件を満たせば試験が受けられますが、ケアマネ試験の合格率は10~20%程度を推移していて難易度が高めです。
また、ケアマネ試験に合格したら終わりではなく、その後は介護支援専門員実務研修も修了しなければなりません。研修修了後、介護支援専門員証の交付を受けてはじめてケアマネを名乗れるようになります。狭き門とも言える介護支援専門員ですが、取得すれば利用者さんに提供するケアを自ら提案できるようになるため、大きなやりがいを感じられるはずです。介護職員としてキャリアアップを目指す方は、ケアマネージャーを選択肢の一つとして考えてみても良いかもしれませんよ。
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