
この記事のまとめ
- 「実務経験ルート」なら、中卒の方も介護福祉士国家試験を受験できる
- 実務経験ルートとは、実務経験3年と実務者研修修了という要件を満たすこと
- 中卒から介護福祉士を目指す方法としては、「福祉系高校ルート」もある
「中卒でも介護福祉士になれるの?」と気になる方もいるでしょう。介護福祉士の実務経験ルートには学歴の要件がないため、中卒の方も介護福祉士になれます。この記事では、中卒から介護福祉士を目指す方法を解説。「実務経験ルート」の具体的な要件や、「福祉系高校ルート」についてまとめました。介護福祉士国家試験の概要や、中卒の方が介護福祉士になるメリットもご紹介するので、ぜひキャリアの参考にしてください。
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中卒の方も介護福祉士になることは可能です。介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験する場合、学歴は問われません。介護福祉士国家試験は、実務経験ルートで受験する方がおよそ9割なので、中卒の方も一般的なルートで介護福祉士になれるといえます。また、高校卒業の資格を得たい場合は、福祉系高校に通って介護福祉士を受験する方法もあるでしょう。
出典
厚生労働省「第36回介護福祉士国家試験合格発表」(2024年8月6日)
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中卒から介護福祉士になれる「実務経験ルート」とは?
介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験するには、3年以上の実務経験と介護福祉士実務者研修の修了が必要です。
3年以上の実務経験とは
介護福祉士国家試験を受験するための「3年以上の実務経験」とは、介護施設や医療機関、訪問介護などにおいて、3年以上介護等の業務を行うことです。正社員に限らず、パート・アルバイトや派遣社員としての実務経験でも、要件を満たせます。ただし、相談援助や看護業務などを行い、介護業務を行わない職員は、実務経験を満たせないので注意しましょう。
実務経験の要件としては、「従事期間3年以上」だけではなく、「従事日数540日以上」という条件もあります。従事期間3年に加え、実際に介護等の業務を行った日が540日以上必要です。従事日数に時間数の規定はないので、短時間でも介護等の業務を行えば、1日として計算できます。
介護福祉士を取得するための実務経験について詳しく知りたい方は、「介護福祉士国家試験の受験資格である実務経験とは?対象の施設や職種を解説」の記事も参考にしてください。
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介護福祉士実務者研修の修了とは
介護福祉士実務者研修は、介護に関する専門的な知識や技術を習得できる内容で、受講要件は定められていません。カリキュラムは450時間以上なので、無資格から取得するには、最短でも6ヶ月ほどかかります。費用は10万~20万円程度です。介護に関する公的資格を取得していると、受講済みのカリキュラムが免除されるため、下位資格である「介護職員初任者研修」を先に取得する人も少なくありません。
介護福祉士実務者研修のカリキュラムの多くは、通信教育で受講できます。通学が必須なのは、「介護過程IIIのスクーリング」と「医療的ケアの演習」のみです。介護職として働きながら取得する場合は、職場に相談しておけば、受講日に休めるようシフトを調整してもらえる可能性が高いでしょう。また、職場や自治体によっては、資格取得の費用を補助してくれる場合もあります。
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中卒から実務経験ルートで介護福祉士になるまでの流れ
中卒の方が、未経験で介護の仕事を始めて介護福祉士になるまでの基本的な流れを、以下にまとめました。
ステップ1 | 介護職員初任者研修を修了する(学習期間は約1~4ヶ月) |
ステップ2 | 介護の実務経験を積みながら、介護福祉士実務者研修を修了する(学習期間は約2~6ヶ月) |
ステップ3 | 実務経験の要件を満たす(従事期間3年かつ従事日数540日以上) |
ステップ4 | 介護福祉士国家試験に申し込み、受験する(筆記試験) |
ステップ5 | 介護福祉士国家試験に合格したら、資格登録の手続きを行う |
ステップ1の介護職員初任者研修は必須ではありませんが、介護職としての基礎を学べるので、未経験の方は取得を検討してみると良いでしょう。介護職として働き始める前に受講すれば、スキルが身につくだけではなく、自身が介護の仕事に向いているのかを判断する材料にもなります。介護職員初任者研修を働きながら取得する場合は、介護の仕事を始めてから1年以内に受講するのがおすすめです。
実務経験ルートの「実務者研修の修了」「実務経験3年かつ540日以上」という2つの要件を、受験する年の3月31日までに満たす見込みがあれば、介護福祉士国家試験を受験できます。申し込みの時点で要件をクリアしていない場合、「受験資格を満たす見込み」として受験の手続きを行い、実際に受験資格を満たした時点で追加の書類を提出しましょう。
実務経験ルートで介護福祉士を受験したい方は、「社会人として働きながら介護福祉士になるには?資格取得のルートを解説!」の記事もあわせてご参照ください。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]受験資格:実務経験+実務者研修」(2024年8月6日)
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中卒の方は福祉系高校ルートでも介護福祉士を目指せる
中卒から介護福祉士を目指す場合、高校に3年間通って指定の科目を履修することで、試験の受験資格を得るルートもあります。かかる期間は実務経験ルートと同じ3年ですが、高校への通学が必要で、福祉以外の勉強も並行することになるでしょう。
「高校卒業も同時に目指したい」「介護以外の勉強もしたい」もしくは、「働きながら介護福祉士を受験する自信がない」という場合は、福祉系高校ルートを検討すると良いかもしれません。福祉系高校ルートを選ぶ場合、通学時間や学費がかかることや、自分より若い年代の人と一緒に学ぶ可能性があることを理解しておきましょう。
介護福祉士国家試験の受験ルートについては、「介護福祉士の受験資格を得るルートを解説!必要な実務経験や試験概要は?」にまとめています。
介護福祉士国家試験の概要
ここでは、「介護福祉士を目指したい」という方に向けて、介護福祉士国家試験の概要をご紹介します。日程・科目・難易度などをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
介護福祉士国家試験の日程
介護福祉士国家試験を受けるためには、8月上旬~9月上旬ごろに受験申し込みを行う必要があります。受験申込書と合わせて、身分証明書類や受験資格を証明する書類も提出しなければなりません。申し込みに使う「受験の手引」は7月上旬ごろから請求できるので、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの「[介護福祉士国家試験]受験申し込み手続き」をチェックして、早めに準備を進めましょう。
介護福祉士国家試験は、筆記試験のみの実施です。例年1月下旬ごろに試験が行われ、3月下旬に合格発表があります。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]受験申し込み手続き」(2024年8月6日)
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]試験概要」(2024年8月6日)
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介護福祉士国家試験の科目・合格基準
公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの「[介護福祉士国家試験]合格基準」によると、介護福祉士国家試験の出題範囲は、下記の11科目群です。
- 1.人間の尊厳と自立、介護の基本
- 2.人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術
- 3.社会の理解
- 4.生活支援技術
- 5.介護過程
- 6.こころとからだのしくみ
- 7.発達と老化の理解
- 8.認知症の理解
- 9.障害の理解
- 10.医療的ケア
- 11.総合問題
コミュニケーション技術や介護スキル、認知症や障がいへの理解などが問われる試験です。専門的な問題もありますが、初任者研修や実務者研修で学ぶ内容がメインのため、履修した科目を復習する形で勉強できるでしょう。
介護福祉士国家試験に合格するには、すべての科目で得点しなければいけません。総得点の60%程度が合格基準ですが、具体的な合格点は試験の難易度によって補正されます。試験問題は125問で、1問1点です。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「[介護福祉士国家試験]合格基準」(2024年8月6日)
介護福祉士国家試験の合格率
厚生労働省の「第36回介護福祉士国家試験合格発表」によると、2024年に行われた介護福祉士国家試験の合格率は82.8%でした。近年の合格率は、70~80%前後で推移しています。
受験ルート別に介護福祉士国家試験の合格率を見ると、専門学校などに通う「養成施設ルート」は71.5%と少し低めです。一方で、福祉系高校ルートの合格率は91.4%と高くなっています。また、実務経験ルートの合格率も比較的高い水準です。
実務経験ルートの職場別の合格率を確認してみましょう。
実務経験ルートでは、訪問介護員(ホームヘルパー)の合格率が特に高いようです。訪問介護の仕事には、「介護保険制度の理解が求められる」「シフトを調整して勉強時間を確保しやすい」といった面があるため、合格率が高いのかもしれません。反対に、老健や介護医療院などの医療を重視する施設で働いている方の合格率は、少し低い水準となっています。
出典
厚生労働省「第36回介護福祉士国家試験合格発表」(2024年8月6日)
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中卒の方が介護福祉士になるメリット
「安定した稼ぎを得たい」「働きながらキャリアアップしたい」と思っている中卒の方にとって、介護福祉士になるメリットは豊富です。「介護福祉士の資格は取ったほうが良いの?」と疑問に思っている方は、以下でメリットをチェックしてみましょう。
介護福祉士は需要が高く仕事が安定している
高齢化に伴い、介護従事者の需要は増しているため、介護業界は安定して働けるのが特徴です。国家資格である介護福祉士の資格があれば、日本全国どこでも活躍できます。もしも、「家庭の事情で引っ越す」「勤務先が倒産した」といった状況になった場合も、資格やスキルを活かしてスムーズに転職できるでしょう。
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資格取得が給与アップにつながる
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.157)」によると、介護職員の保有資格別の平均給与は以下のとおりです。
保有資格 | 平均給与 |
無資格 | 268,680円 |
介護職員初任者研修 | 300,240円 |
介護福祉士実務者研修 | 302,430円 |
介護福祉士 | 331,080円 |
社会福祉士 | 350,120円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 376,770円 |
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果(p.157)」
無資格で介護職員として働き始めた方が、3年の実務経験を積んで介護福祉士を取得すると、6万円ほど給与がアップする可能性があります。介護職員の経験や保有資格に応じて給与を上げる職場は少なくありません。そのため、介護福祉士などの専門的な資格を取得すれば、中卒で働き始めてから収入アップを目指せます。
出典
厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(2024年8月6日)
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介護業界でのキャリアアップに役立つ
介護福祉士の資格を取得すれば、介護業界でキャリアアップしやすくなります。「介護福祉士として実務経験を積み、さらに専門的な資格を取得する」「役職に就き、介護サービスの管理に携わる」など、介護福祉士になることで将来の選択肢が増えるでしょう。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の取得を目指せる
ケアマネジャーになるための試験を受けるには、「特定の国家資格等に基づく業務」もしくは「相談援助業務」の実務経験が必要です。介護福祉士は、前者の要件である「特定の国家資格」に該当します。そのため、資格登録をしたうえで、介護福祉士として5年かつ900日以上の実務経験を積めば、ケアマネジャー試験の受験資格を得られます。
ケアマネジャーは、サポートを必要とする方が抱える課題に積極的にアプローチし、改善に向けて支援できる職種です。利用者さんのケアの方向性を決められるため、「より良い介護サービスを提供したい」と感じる方に向いているでしょう。
ケアマネジャーになると、給与がアップしたり、主任ケアマネジャーへのさらなるキャリアアップを目指せたりするというメリットがあります。ケアマネジャーの資格取得について詳しく知りたい方は、「介護福祉士からケアマネになるには?受験要件やステップを解説」の記事をご覧ください。
出典
厚生労働省「介護職員・介護支援専門員」(2024年8月6日)
管理職へのキャリアアップを目指せる
介護福祉士の資格があれば、管理職へのキャリアアップも目指せます。有料老人ホームやデイサービス、ショートステイ、訪問介護事業所などには、管理者になるための必須要件がありません。そのため、介護事業所が管理者になる要件を定める場合が多いようです。
実際に「介護事業所の管理職・管理職候補の求人」を見てみると、介護福祉士の資格や実務経験を応募要件とする求人も少なくありません。また、介護福祉士として勤務しているなかで、管理職への昇進を打診される可能性もあるでしょう。
出典
e-Gov法令検索「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(2024年8月6日)
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中卒から介護福祉士を目指す方によくある質問
ここでは、中卒から介護福祉士を目指す方によくある質問に回答します。「中卒だけど、介護業界で活躍できるの?」と気になっている方は、確認してみましょう。
介護福祉士は中卒でもなれるの?
介護福祉士の資格取得に学歴の要件はないので、中卒の方も介護福祉士になることができます。介護福祉士になるには、主に「実務経験ルート」「養成施設ルート」「福祉系高校ルート」の3つのルートがあり、おすすめは「実務経験ルート」です。実務経験ルートでは、「実務経験を3年以上積む」「介護福祉士実務者研修を取得する」という2つの条件をクリアすれば、介護福祉士国家試験を受験できます。
「中卒から介護福祉士になれる「実務経験ルート」とは?」では、介護福祉士の資格を取得するまでの流れを解説しているので、ぜひご覧ください。
中卒でも取れる福祉の資格を教えて!
受講要件がない「介護職員初任者研修」「介護福祉士実務者研修」は、中卒の方も取得できます。初任者研修は約1~4ヶ月で修了可能。実務者研修は、無資格の場合は6ヶ月程度で修了できます。また、実務経験や資格取得という要件を満たせば、介護福祉士やケアマネジャーの試験も、学歴を問わず受験可能です。
こちらでご紹介したのは、すべて公的資格なので、取得すれば高い信頼を得られるでしょう。資格の取得方法については、「介護の資格の取り方とは?研修の受講費用や難易度、試験の受験資格を解説!」をご参照ください。
中卒から社会福祉士になれますか?
中卒から社会福祉士になるのは難易度が高めですが、不可能ではありません。社会福祉士国家試験を受けるには、実務経験や学歴の要件を満たす必要があります。中卒の方の場合、「介護福祉士を取得→相談援助の実務経験4年→一般養成施設1年」といったルートで、社会福祉士国家試験の受験資格を得ることが可能です。ただし、生活相談員など、相談援助を行う職種に就くための要件は、自治体や職場によって異なります。介護福祉士の資格を保有していても、相談援助に携わるのが難しい場合もあるため、自身が働く自治体の要件を調べておくことが大切です。
社会福祉士の資格取得に興味がある方は、「社会福祉士資格を取得する7つのメリットとは?取得方法やルートも解説!」の記事や、「生活相談員の求人」も参考にしてみてください。
まとめ
中卒の方も、実務経験ルートで介護福祉士を目指せます。実務経験ルートとは、「介護業務等の実務経験3年以上」「介護福祉士実務者研修の修了」という2つを満たし、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることです。未経験で介護の仕事を始める場合、まずは「介護職員初任者研修」という基礎的な資格を取得し、一歩ずつステップアップする選択肢もあるでしょう。
また、中卒から介護福祉士を目指す方法として、福祉系高校ルートもあります。福祉系高校に3年間通い、介護福祉士国家試験の受験資格を得るルートなので、「高校卒業と介護福祉士取得を同時に叶えたい」という方におすすめです。
介護福祉士になるメリットは、安定して働けることや、キャリアアップを狙えること。国家資格である介護福祉士を取得すれば、介護業界で幅広く活躍できるでしょう。
「働きながら介護福祉士を取得したい」という方や、「中卒でも転職に不利にならない?」と不安な方は、レバウェル介護(旧 きらケア)をご利用ください。介護業界を専門とする就職・転職支援サービスの「レバウェル介護(旧 きらケア)」では、学歴不問の求人を多数取り扱っています。「無資格OKの求人」も豊富です。介護職としてのキャリアや、資格取得に関する相談も歓迎。専任のアドバイザーが履歴書作成・面接対策など、求職活動を総合的にサポートいたします。サービスはすべて無料なので、ぜひご活用くださいね。
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