
この記事のまとめ
- サービス提供責任者の残業時間は、1週間で平均2.3時間
- サービス提供責任者の残業要因は、担当する業務量の多さ
- サービス提供責任者が残業を減らすには、適切な人員配置や業務効率化が必要
「サービス提供責任者は残業が多いの?」と気になる方もいるでしょう。サービス提供責任者は、残業なしの場合や残業が多い場合があるため、自分に合った職場を見つけることが大切です。この記事では、サービス提供責任者の残業の実態を解説します。他産業や同じ介護業界の他職種との比較、残業が発生する要因も紹介。残業を減らす方法にも触れているので、サービス提供責任者の就労状況が気になる方は、ご一読ください。
サービス提供責任者の残業はどれくらい?
公益財団法人介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査:労働者調査(p.49)」によると、サービス提供責任者の労働時間は1週間で平均39.8時間、残業時間は平均2.3時間です。
「サービス提供責任者は残業が多そう」と不安に感じる方もいるようですが、実際のところはどうなのか、調査データを詳しく見ていきましょう。
サービス提供責任者は残業なしが半数弱
同資料(p.50)によると、「残業なし」と答えたサービス提供責任者は47.3%と、最も高い割合です。サービス提供責任者の半数近くは残業をしていないため、一概に残業が多い職種とはいえないでしょう。
残業時間が週5時間以上のサービス提供責任者は約20%
同資料(p.50)によると、1週間に5時間以上残業をしているサービス提供責任者の割合は、21.2%です。このことから、残業を1日1時間ほどしている人が5人に1人以上いると分かります。
サービス提供責任者は、「残業なしが約半数」「残業週5時間以上が約20%」という結果です。そのため、残業の有無や時間は所属する事業所によって異なるといえるでしょう。
雇用形態で残業時間の傾向に違いがある
無期雇用のサービス提供責任者の1週間の残業時間は「5時間未満」が27.0%、「5時間以上」が21.6%。一方で、有期雇用職員の場合、「5時間未満」が31.2%、5時間以上が19.8%です。有期雇用のサービス提供責任者が残業をする場合、無期雇用職員よりも短時間な傾向にあります。
出典
公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」(2024年10月2日)
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サービス提供責任者の残業は他職種と比較して多い?
ここでは、サービス提供責任者の残業が多いのかどうか、全産業、そして同じ介護業界の他職種の平均残業時間と比較します。
全産業の残業時間との比較
厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報(p.7)」によると、全産業の1ヶ月の残業時間の平均は、10時間です。雇用形態別に見ると、一般労働者が13.8時間、パートタイム労働者が2.2時間となっています。
サービス提供責任者の残業時間の平均は、無期雇用・有期雇用ともに1週間あたり2.3時間。1ヶ月に換算すると約9.2時間です。そのため、無期雇用のサービス提供責任者の平均残業時間は、全産業の平均より少ないことが分かります。反対に、有期雇用のサービス提供責任者の平均残業時間は、全産業の平均より月7時間多いようです。
出典
厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」(2024年10月2日)
介護業界の他職種との残業時間の比較
ここでは、サービス提供責任者と関わることが多い「ホームヘルパー」や、似た役割を担う「生活相談員」の残業実態を解説します。
ホームヘルパーの残業はサービス提供責任者より少なめ
公益財団法人介護労働安定センターの「令和5年度介護労働実態調査:労働者調査(p.50)」によると、「残業なし」と答えたホームヘルパーは67.6%でした。
ホームヘルパーは、介護従事者のなかで残業時間が少ない職種です。同じく訪問介護事業所に勤務するサービス提供責任者と比べても、ホームヘルパーの残業時間は少ない傾向にあります。
生活相談員の残業はサービス提供責任者より多め
介護施設でサービスの管理に携わる生活相談員の残業時間は、サービス提供責任者より多い傾向にあります。「残業なし」と答えた生活相談員の割合は42.1%で、サービス提供責任者より5%ほど低い結果です。生活相談員は、介護従事者のなかでは残業が多い傾向にある職種といえます。
出典
公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」(2024年10月2日)
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サービス提供責任者に残業が発生する理由は?
サービス提供責任者に残業が発生する主な理由は、担当する業務が多いことです。
サービス提供責任者の業務に勤務時間内に対応できない
サービス提供責任者の主な業務内容は、以下のとおりです。
- 訪問介護サービスの利用受付・契約業務
- 利用者さんやご家族との面談
- サービス担当者会議への出席
- 訪問介護計画書および介護手順書の作成
- 訪問介護サービスのモニタリング
- ホームヘルパーのシフト管理
- ホームヘルパーのマネジメント
サービス利用の問い合わせから始まり、実際に訪問介護を提供するまでの過程に関わります。そのため、初回訪問やサービス担当者会議までに必要な準備が多く、残業が発生することもあるようです。利用者さんの自宅に訪問する業務もあり、移動に時間がかかることもあるでしょう。
担当する利用者数が多く訪問や書類作成に時間がかかる
サービス提供責任者は、担当する利用者さんの人数が多いことにより、残業することもあるようです。担当する利用者さんに適切なサービスを提供するためには、一人ひとりの状況を把握したうえで、支援しなければなりません。
厚生労働省の「訪問介護・訪問入浴介護(改定の方向性)(p.44)」によると、サービス提供責任者の配置基準は、原則として「利用者の数40人に対して1人以上」です。事業所が要件を満たした場合は、最大利用者さん50人までを1人で担当できます。
サービス提供責任者は、担当人数分の訪問介護サービスを管理するのが仕事です。計画書や介護手順書の作成、介護記録の確認、訪問を担当するヘルパーの指導などを行います。そのため、担当する利用者さんの人数が増えるごとに、多くの業務を抱えることになるようです。
出典
厚生労働省「第230回社会保障審議会介護給付費分科会資料」(2024年10月2日)
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管理者やホームヘルパーを兼任していて忙しい
管理者やホームヘルパーを兼任しているサービス提供責任者もいます。サービス提供責任者は、専従配置が原則ですが、業務に支障がない範囲でほかの職種を兼任できます。また、ホームヘルパーが欠勤した際、サービス提供責任者が代わりに訪問介護を行うことは少なくありません。
また、高齢者化や人手不足の影響により、対応件数が増え、担当業務が多くなっている場合もあるようです。
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サービス提供責任者の兼務は認められているの?
サービス提供責任者が残業を減らすにはどうしたら良い?
残業を減らすためには、個人だけで対応するのではなく、管理者をはじめとした事業所側に相談すると良いでしょう。
事業所の人手不足を解消する
事業所の人員が増えれば、1人あたりの仕事量が減り、残業を減らせるでしょう。人手不足を解消するには、就労環境や給与の改善といった取り組みを継続することが重要です。また、事務職員を増やすことも、サービス提供責任者の業務負担の軽減につながります。
業務の効率化を図る
厚生労働省の「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン 改訂版(p.8)」では、「介護サービスにおける生産性向上のための7つの取組」として、以下を挙げています。
- 職場環境の整備
- 業務の明確化と役割分担
- 手順書の作成
- 記録・報告様式の工夫
- 情報共有の工夫
- OJTの仕組みづくり
- 理念・行動指針の徹底
業務の効率化を図るための最初の一歩となるのは、話し合いの場を設けることです。管理者やサービス提供責任者、ホームヘルパーなど、職種や立場の垣根を越え、さまざまな視点で課題を洗い出すことから始めてみると良いでしょう。
出典
厚生労働省「介護分野の生産性向上 ~お知らせ~」(2024年10月2日)
介護ICTを導入する
ICTを活用し、業務の効率化を図る方法もあります。たとえば、スマートフォンやタブレットで利用できる介護記録ソフトを導入すれば、事務処理がしやすくなるでしょう。ソフトやアプリを活用し、記録・請求などの業務を一本化できれば、「同じ項目を何度も入力する」といった手間を省くことができます。
職員間の情報共有の見直しを行う
サービス提供責任者は、所属するホームヘルパーから状況を聞き取り、問題があれば迅速に対応することも業務の一つです。連絡ツールが電話やメールの場合、情報共有が1対1になるため、担当する利用者さんの情報をすべて把握するには時間がかかります。
情報共有を効率化したい場合は、アプリを活用したグループ通話やチャットツールの導入などを検討すると良いでしょう。情報共有のツールは、サービス提供責任者だけではなく、ホームヘルパーの業務にも役立ちます。
残業の少ない訪問介護事業所に転職する
「サービス提供責任者の残業はどれくらい?」でお伝えしたとおり、残業の有無や長さは、所属する事業所ごとに異なります。そのため、管理者に相談しても残業時間に改善が見られない場合は、転職を視野に入れてみるのも良いでしょう。残業がないサービス提供責任者も多くいるため、職場を変えることで無理なく働ける可能性があります。
とはいえ、残業の有無を転職前に調べるのは難しいと感じるかもしれません。介護業界に特化した転職エージェントのレバウェル介護(旧 きらケア)では、転職活動を総合的にサポート。「残業なし」という条件の求人など、ご希望に沿った職場をご提案いたします。
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サービス提供責任者の残業が少ない職場の見分け方は?
残業が少ない職場で働きたいサービス提供責任者は、人員配置に余裕がある職場を選ぶのがおすすめです。
サービス提供責任者とホームヘルパーを兼任する場合は、訪問介護の件数が1日どれほどあるのか、事前に把握しておくことも大切です。訪問先によっては移動にも時間がかかるため、多くても3件程度までに抑えられている職場が望ましいでしょう。
また、事業所に管理者が常駐しているかどうかも大切なポイントです。管理者は事業所全体の管理・運営に携わっており、人材管理も業務の一つ。相談体制がしっかり整った環境であれば、業務を滞らせることなく進められるでしょう。
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サービス提供責任者に関してよくある質問
ここでは、サービス提供責任者に関するよくある質問に回答します。「サービス提供責任者の仕事って大変なの?」と気になっている方は、ぜひ参考にしてください。
サービス提供責任者に向いていない人の特徴は?
会話やコミュニケーションが苦手な方は、サービス提供責任者に向いていない可能性があるでしょう。ただし、コミュニケーション能力は働きながら身につけられるので、最初から完ぺきを目指す必要はありません。相手が何を伝えようとしているのか、話に耳を傾けて理解しようとする姿勢があれば、サービス提供責任者として活躍できるでしょう。
詳しくは、「サービス提供責任者に向いていない人・向いている人の特徴は?」の記事にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
サービス提供責任者が名前だけ貸すのは違法ですか?
サービス提供責任者が名前だけ貸すのは違法です。訪問介護事業所の人員配置基準を満たすためには、原則として「利用者の数40人に対して1人以上」のサービス提供責任者の配置が求められます。しかし、人材が見つからず、要件を満たす人からの名義貸しが発生する場合があるようです。名義の貸し借りを行うと、損害賠償を求められるといったリスクもあるため、もし頼まれても必ず断りましょう。
まとめ
サービス提供責任者の残業の有無や時間数は、職場によって異なります。残業なしの人も多い一方で、1週間に5時間以上残業をしている方も2割強いるようです。
残業を削減するためには、管理者に相談して職場環境を改善すると良いでしょう。相談しても状況の改善が見られず、「仕事がきつい…」と感じる場合は、転職する選択肢もあります。
「残業の少ない職場に転職したい」という方は、レバウェル介護(旧 きらケア)にご相談ください。介護事業所へのヒアリングをしっかり行っているアドバイザーが、無理せず働ける職場環境の求人をご紹介いたします。
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