
この記事のまとめ
- 介護福祉士のパート合格とは、試験を3パートに分けて合否を判定する制度
- パート合格は、第38回介護福祉士国家試験から導入される予定
- パート合格導入のメリットは、仕事と試験勉強を両立させやすくなることなど
2026年1月実施の第38回介護福祉士国家試験から、「パート合格」が導入されることになりました。パート合格とは、試験を3つのパートに分け、それぞれ合否判定をする制度のことです。この記事では、パート合格の仕組みや合格基準、試験当日のスケジュールをまとめました。パート合格導入前の試験との違いや、制度の背景についても解説します。介護福祉士国家試験の受験を予定している方は、ぜひご一読ください。
介護福祉士とは?仕事内容や資格の取得方法、試験概要をわかりやすく解説!介護福祉士国家試験のパート合格とは?
介護福祉士国家試験のパート合格とは、試験をA・B・Cの3つのパートに分けて、パートごとに合否を判定する制度です。初回の受験時に全科目で合否を判定し、不合格だった場合に、パート合格が適用されます。不合格になったパートは、次回以降の介護福祉士国家試験で、再受験が可能です。
各パートの科目
Aパートには、介護の理念・制度への理解や、コミュニケーション技術などの介護スキルを問う科目がまとめられています。Bパートは、病気や障がい、身体の仕組みへの理解を問う科目です。Cパートの科目では、介護の知識や技術を応用するスキルが問われます。
厚生労働省の「介護福祉士国家試験パート合格の導入の在り方について(p.17)」によると、試験科目のパート分けの詳細は、以下のとおりです。

受験する試験科目は、パート合格の導入前後で変更はありません。第37回以前の介護福祉士国家試験を受験した方は、勉強する範囲が変わるわけではないので、安心してください。
パート合格導入で変わるのは、科目の分け方です。領域ごとでの分け方から、Aパート・Bパート・Cパートの3パートへの分け方に変わります。
受験方法と受験料
厚生労働省の「介護福祉士国家試験パート合格の 導入の在り方について(p.7)」によると、パート合格が導入された後の受験方法は、以下の表のとおりです。

初回の受験時には、全パートの受験が必要です。基本的には、合格基準である「総得点の60%以上(難易度によって補正)かつ全科目での得点」をもとに、合否を判定します。
全パートでの判定が不合格だった際は、パート合格が適用され、不合格のパートを次回以降の試験で再受験することが可能です。再受験の際、全パートを受けるか不合格だったパートのみを受けるかは、受験する人が選択できます。
受験料は18,380 円のままで、不合格パートだけを再受験する場合も、受験料は全額かかる見込みです。
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試験当日のタイムスケジュール
パート合格導入後の介護福祉士国家試験当日のスケジュールは、以下のとおりです。

午前中にAパート、午後にBパートとCパートの試験が行われる予定です。パート合格導入前と同じくらいの所要時間で、試験を実施できる見込みとなっています。
午後の部は、「BパートとCパートを受験する人」「Bパートのみ受験する人」「Cパートのみ受験する人」の試験を、同時に開始します。1つのパートだけを受験する場合は、自身の試験時間が終了したら先に退室するようです。
合格基準
厚生労働省の「介護福祉士国家試験パート合格の 導入の在り方について(p.9)」によると、全パートを受験する場合の合格基準は、パート合格導入前と同じく、「総得点の6割以上かつすべての科目群で得点すること」です。
全パートでの合格基準が満たせなかった場合、パートごとに合否を判定します。パートごとの合格基準は、全科目を受験した人の平均得点をもとに決定されるようです。また、パートごとの合否判定においても、パート内のすべての科目群で得点する必要があります。
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パート合格判定の有効期間
厚生労働省の「介護福祉士国家試験パート合格の 導入の在り方について(p.10)」によると、パート合格は翌々年まで有効です。つまり、全パートでの判定で不合格になっても、2年以内に他のパートに合格できれば、介護福祉士を取得できます。
出典
厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」(2024年12月2日)
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介護福祉士国家試験のパート合格の導入はいつから?
パート合格が導入されるのは、2026年1月に開催される第38回介護福祉士国家試験からの予定です。ただし、導入の時期は今後変更になる可能性があるので、注意してください。
出典
厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」(2024年12月2日)
介護福祉士国家試験にパート合格はなぜ導入された?
パート合格導入の目的は、質の高い介護サービスの提供を続けるために、介護福祉士になる人を増やすことです。
厚生労働省の「介護福祉士国家試験パート合格の 導入の在り方について(p.3)」によると、2040年度末までに、新たに約57万人の介護人材の確保が必要と推計されています。専門性の高い介護職員の確保と育成を叶えるためには、介護福祉士のなり手を増やすことが重要です。
しかし、2020年度からの3年間で、介護福祉士国家試験の「実務経験ルート」の受験者は、約10,000人減少しました。受験者の8割が「実務経験ルート」による受験のため、受験者数が大きく減っていると分かるでしょう。
受験者数が減少した原因として、仕事と勉強の両立が難しいことが考えられます。受験しやすい環境を整え、介護福祉士を目指す人材を確保するために、パート合格が導入されることになりました。
出典
厚生労働省「介護福祉士国家試験パート合格の導入に関する検討会」(2024年12月2日)
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介護福祉士国家試験にパート合格を導入するメリット
介護福祉士国家試験にパート合格を導入するメリットは、以下のとおりです。
- 仕事と試験勉強を両立させやすくなる
- 受験への心理的なハードルが下がる
- 効率的に勉強できる
パート合格が導入されれば、合格したパートが再受験の際に免除されるので、学習範囲を絞って勉強を進められます。そのため、「働きながらでも勉強しやすい」というメリットを得られるでしょう。
また、「一発合格しなきゃ…」という心理的な負担が少なくなり、受験へのハードルが下がることも考えられます。1回不合格になっても、すべての科目を勉強しなおす負担がないのは、大きなメリットです。
また、パートは領域によって分けられているので、それぞれの科目に専念して勉強できます。領域ごとに集中して理解を深められるので、質の高い介護福祉士を確保することにもつながる可能性があるでしょう。
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介護福祉士国家試験にパート合格を導入するデメリット
介護福祉士国家試験にパート合格を導入するにあたって、次のような懸念点も挙げられています。
- 介護福祉士の質が低下する可能性がある
- 手続きが複雑になる
- 介護福祉士の社会的地位が低下する恐れがある
試験を数回に分けることで、知識やスキルが定着していない状態で介護福祉士になる懸念があります。ただし、パートごとに専念して勉強できるメリットを考えると、必ずしもスキルの低下につながるとはいえません。
手続きが複雑になることで人件費がかかり、今後受験料が高くなる可能性も考えられます。また、資格取得の難易度が低いと認知されることで、介護福祉士の社会的な地位が低下する恐れもあるでしょう。
パート合格導入に関する懸念点を払拭するために、制度の仕組みについて、さらに検討が重ねられる予定です。パート合格の詳細は変更される可能性があるので、今後の情報にも注目しましょう。
介護福祉士国家試験のパート合格についてよくある質問
ここでは、介護福祉士国家試験のパート合格についてよくある質問にお答えします。「パート合格の導入で何が変わるの?」と気になっている方は、ご一読ください。
介護福祉士国家試験のパート合格の導入で受験科目は変わる?
介護福祉士国家試験にパート合格が導入されても、受験科目は変更されません。また、パート合格導入前と同じく、13科目(11科目群)すべてを受験する必要があります。初回の受験時には、すべてのパートを受験しなくてはいけません。総得点で合格基準を満たせなかった際に、パートごとの合否判定が実施されます。不合格になったパートは、次回以降の試験で再受験が可能です。詳しくは、この記事の「各パートの科目」をチェックしてみてください。
パート合格が導入された後の合格基準を知りたいです
初回受験時はすべてのパートを受験する必要があり、合格基準はパート合格導入前と変わりません。総得点の6割以上を基準としたその年の合格点を満たし、すべての科目群で得点していれば、合格となります。パートごとの合格基準は、全科目を受験した人の平均点に基づいて設定される予定です。パート合格を活用する場合も、パート内のすべての科目群で得点する必要があります。パート合格の合格基準について詳しく知りたい方は、この記事の「合格基準」もご覧ください。
介護福祉士国家試験のパート合格は外国人にも適用されますか?
介護福祉士国家試験のパート合格は、外国人の方にも適用されます。技能実習や特定技能の外国人の方のなかには、在留資格「介護」を取得するために、介護福祉士を受験する方もいるでしょう。しかし、日本語の勉強や実習と、介護福祉士の試験勉強の両立に課題があるためか、外国人の方の合格率は、平均を下回っています。外国人の方が在留期間内に介護福祉士を取得しやすくすることも、パート合格導入の目的の一つです。
まとめ
第38回介護福祉士国家試験から導入される予定の「パート合格」とは、試験を3つのパートに分けて、パートごとに合否を判定する制度です。総得点で不合格だった場合に、パートごとに合否が判定されます。合格できなかったパートのみを、次回以降に再受験することが可能です。
パート合格が導入されても、受験科目に変更はありません。そのため、第37回以前の介護福祉士国家試験を受験された方は、再受験の際に勉強した知識を活かせます。
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