
この記事のまとめ
- 介護職員が利用者さんにキレた場合は、自身の感情と向き合うことが大切
- 利用者さんに怒りをぶつけないためには、気持ちをコントロールすると良い
- 介護職員がキレてしまった場合、怒りが落ち着いてから利用者さんに謝罪する
介護職として働く方の中には、「利用者さんにキレてしまった…」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。利用者さんに怒ってしまったからといって、自分を責め過ぎる必要はありません。アンガーマネジメントや割り切る気持ちを取り入れ、今後に活かすことを考えましょう。この記事では、介護職が利用者さんにイライラしてしまう原因や対処法、体験談をご紹介します。利用者さんとの関係を改善したい方は、ぜひご一読ください。
利用者さんにキレた私は介護職失格?
介護職として働いていると、利用者さんとのコミュニケーションが上手くいかないと感じることもあるでしょう。利用者さんに暴言を吐かれたり、理不尽な態度をとられたりしたとき、思わず感情が高ぶってしまうこともあるようです。中には、利用者さんに強くあたってしまい、「自分は介護職に向いていないのかも…」と悩む方もいるかもしれません。
しかし、介護職も一人の人間です。利用者さんへの暴力・暴言は決して許されませんが、多少イライラしてしまう程度なら、仕方のないことといえます。
利用者さんとのやり取りが上手くいかなくても、自分を責め過ぎず、怒りや悲しみの感情を容認してあげましょう。「利用者さんにキレてしまった」と悩んでいる時点で、利用者さんを大切にしたいという気持ちがあるということ。同じことを繰り返さないよう対処法を学べば、利用者さんとのコミュニケーションが上手くいくようになるでしょう。
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介護職が利用者さんにキレてしまう原因と対策
介護職が利用者さんにキレてしまいそうになるのには、理由があります。
ここでは、利用者さんにイライラしてしまう原因とその対策をまとめました。利用者さんとの関わり方にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
日常的な暴言・暴力
利用者さんの中には、認知症や精神疾患が原因で感情のコントロールが難しく、暴言を吐いたり、暴力を振るったりする方がいる場合があります。一度だけなら我慢できても、日常的に繰り返されることで、ついカッとなってしまうこともあるかもしれません。また、普段から真剣に利用者さんと向き合っているからこそ、理不尽な暴言や暴力を許せないと感じることもあるようです。
利用者さんからの暴言や暴力は、疾患の症状だと割り切って意識的に許容してみると、冷静に対応できることも。認知症や精神疾患への理解を深めると、介護職としてのスキルアップにも繋がるでしょう。
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セクシャルハラスメント
利用者さんから不必要に身体を触られたり、プライベートな質問をされたりすることで、怒りを感じることもあるようです。介護はある程度身体に触れたり、会話をしたりすることが必要な仕事なため、ハラスメントとの線引きが難しいところもあります。そのため、なかなか利用者さんに注意できず、ストレスが募ることもあるでしょう。特に、力の強い男性の利用者さんから女性職員へのセクハラは、怒りだけでなく恐怖も感じやすく、大きなストレスになりやすいといえます。
ハラスメントは、受け手が不快に感じた時点で成立するものです。セクハラだと感じたら、はっきりと「やめてください」と伝えることが重要です。一度伝えてみても利用者さんの態度が変わらなければ、職場の上司や先輩に相談することも考えましょう。もし対応してもらえなければ、転職を視野に入れるのも一つの解決策です。
わがままな態度や高圧的な態度
自分の対応を最優先するようせがんだり、業務外のお願いを強要したりするなど、わがままで高圧的な態度をとる利用者さんに困る場合もあるかもしれません。介助の仕方や順番を批判したり、気に入らないことがあると怒鳴ったりする利用者さんもいるようです。
介護職は、一人の利用者さんの対応に無制限に時間をかけられるわけではありません。わがままな態度や高圧的な態度をとられると、余裕のなさからイライラしてしまうこともあるでしょう。
対策としては、利用者さんに前もってできることとできないことを説明したり、会話のはじめに「5分間だけお話ししましょう」と時間を伝えたりするのが有効です。事前に伝えておくことで、分かってもらえる可能性があります。
身体的な疲れやストレスが溜まっている
夜勤が続いていたり業務量が多かったりすることで、身体的な負担や睡眠不足が深刻化している場合もあるようです。疲労が蓄積されると、感情のコントロールが利きにくくなります。「普段なら冷静でいられるのに、最近無性にイライラしてしまう…」というときは、疲れが溜まっているサインかもしれません。
上司にシフトの相談をしたり、休暇をとってリフレッシュしたりすることで、気持ちを切り替えて業務に臨めるでしょう。
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介護職員が利用者さんへの怒りを抑える方法
多少のイライラは仕方がないことと分かっていても、できるだけ冷静に利用者さんと接したいですよね。
ここでは、利用者さんへの怒りを抑える方法をご紹介します。「最近怒りっぽくなりがちだな…」とお悩みの方は、ぜひチェックしてみてください。
割り切って利用者さんに接する
先述のとおり、利用者さんの中には、認知症や精神疾患が原因で感情のコントロールが苦手な方がいます。理不尽な暴言やクレームを受けると相手や自分を責めてしまいがちですが、症状が原因だと考えると楽になるかもしれません。「仕事の一部だから」と割り切って、あまり深刻に悩み過ぎないようにしてみましょう。
アンガーマネジメントを取り入れてみる
アンガーマネジメントとは、怒りの気持ちと付き合っていくための心理的な訓練のことです。利用者さんとのコミュニケーションに加えて、職場の人間関係にも使えるテクニックなので、身につけると仕事がしやすくなるでしょう。
アンガーマネジメントにおいて、怒りのピークは6秒間と考えられています。瞬間的にキレてしまいそうになったら、6秒間我慢してみると、落ち着いて対応できるかもしれません。
アンガーマネジメントについては、「介護の現場で役に立つアンガーマネジメントとは?トレーニング方法を解説!」で解説しているので、チェックしてみてください。
自分の言動を見つめ直す
自分の介助方法や、利用者さんへの言葉の使い方を振り返ってみましょう。「自分だったらどう接してほしいかな?」と利用者さんの立場に立ってみると、介助のときに力が強かった、食事を口に運ぶペースが早かったなど、改善点が見つかることもあります。
また、利用者さんへの口調や敬語の使い方も見直してみましょう。ため口や強い口調で話していたり、子どものような扱いをしていたりする場合、利用者さんが不快に感じることがあります。少しの改善で利用者さんとの関係が良くなることもあるので、一度自分の言動を振り返ってみると良いかもしれません。
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利用者さんの価値観を否定しない
利用者さんの価値観は、長い時間をかけて作り上げられたものです。利用者さんの中には、考えを否定したり強制したりしようとすると、プライドが傷つけられて頑固になってしまう方もいるでしょう。
ときには、利用者さんの価値観や考え方に納得できないこともあるかもしれません。しかし、信頼関係を築くうえで、利用者さんの話に耳を傾ける姿勢は非常に重要です。気持ちに寄り添い続けることで、利用者さんも段々と心を開いてくれるでしょう。
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利用者さんの態度・行動の理由を考える
頻繁に理不尽な態度をとる利用者さんには、理由があるかもしれません。認知症や精神疾患による症状に加え、自宅で暮らせない不安や寂しさからわがままを言ってしまう方もいるようです。身体が思うように動かせないことから、ストレスが溜まってしまうケースもあるでしょう。
「家族との会話を大切にする人だった」「運動が好きで、アクティブな生活をしていた」など、利用者さんの性格や背景を考えると、施設での生活にフラストレーションが溜まる理由が分かるかもしれません。
職員の間で情報を共有したり、利用者さんを観察して性格を分析したりすると、適切なケアやコミュニケーションに繋がりやすいといえます。
介護職が利用者さんに怒りを感じたときの体験談
ここでは、実際に介護職として働いている方の体験談をご紹介します。
利用者さんに怒りを感じたとき、ほかの介護職はどう対応しているのかを確認してみてください。
高齢の利用者さんの発言に腹を立てて怒ってしまいます。そんなときは、もし自分が利用者さんの立場だったらどう対応したら喜ぶか、納得がいくか、相手の気持ちを想像するようにしています。
介護職として利用者の方々に真面目に向き合わなければならないと思いますが、自分なりの許容範囲を認識するよう努めました。許容範囲を超えて自分が疲れてしまったら、逆に良い介護もできなくなるので、ここまでと割り切る術を身につけるようにしました。
認知機能の低下やストレスから、暴言を吐いたり暴力を振るったりする利用者さんもいます。自分を守るために真正面から受け止めず、適度に受け流すスキルが必要だと思います。
認知症の利用者さんが多いので、同じ話を繰り返されてもイライラせずに対応できるよう、感情のコントロールも意識しています。
介護職も人間なので、利用者さんと関わる中で疲れたりイライラしてしまったりすることもあります。利用者さんの気持ちを想像しながら関わったり、仕事だと割り切って接したりすることで、冷静に対応しやすいようです。
介護職が利用者さんにキレてしまったときの対処法
ここでは、実際に利用者さんにキレてしまった場合、介護職はどのように対処すれば良いのかを解説します。
「利用者さんへの怒りを抑え切れず、どう接すれば良いか分からない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
時間を空けてから利用者さんと話す
もしも衝動的にキレてしまったら、深呼吸して心を落ち着けることが大切です。落ち着いたら、怒ってしまったことを利用者さんに謝罪しましょう。
すぐに冷静になるのが難しいときは、ほかの職員に任せるのも一つの手です。怒りが残ったままだとほかの業務にも支障が出てしまうので、一旦利用者さんと距離を置いたほうが良い場合もあります。その場合は、気持ちが落ち着いてから、必ず利用者さんに謝りに行くようにしましょう。
関係を改善する方法を考える
自分を責め続けても、状況が改善することはありません。過度に引きずったり後悔したりするよりも、利用者さんとの関係をどのように修復するかを考えるほうが重要です。
どのように謝罪すれば話を聞いてもらえるのか、どのように説明したら納得してもらえるのかを考え、再発防止に努めましょう。
上司・先輩に相談する
自分だけでは対応が難しいと感じたら、早めに上司や先輩に相談しましょう。中には、過去に同じような経験をした人もいるかもしれません。第三者目線で対処法をアドバイスしてもらえれば、利用者さんとの関係の修復に役立てられる可能性があります。
また、上司や先輩に相談することで、利用者さんへの対応の仕方を注意して見ていてもらえることも。利用者さんへの対応が上手くできないとき、トラブルになる前に上司や先輩が声をかけてくれるかもしれません。
仲の良い同僚や友人に話を聞いてもらう
利用者さんとの関係でネガティブになってしまうときは、仲の良い同僚や友人に話を聞いてもらうとスッキリするかもしれません。同じ職場のスタッフに相談すると、利用者さんとの悩みに共感してもらえることもあるでしょう。「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と感じられると、気持ちが楽になりやすいといえます。
また、「ただ気持ちを聞いてほしい!」というときは、友人や家族に話を聞いてもらうのも効果的です。
利用者さんにキレたとしても暴力・暴言はNG
たとえ利用者さんに非があったとしても、介護職員が暴力・暴言などの虐待行為を行うことは、絶対に許されません。
もしも、介護職員が利用者さんに暴力を振るったり暴言を吐いたりしてしまうと、暴行罪や傷害罪などの罪に問われ、逮捕・起訴される可能性があります。瞬間的な怒りが原因で、取り返しのつかない事態になるリスクがあることを念頭に置きましょう。
また、厚生労働省の「 高齢者虐待防止の基本(p.16)」によると、介護施設内での虐待を発見した職員は、通報義務を負います。ほかの職員が利用者さんに虐待行為を行うところを発見したら、すぐに市町村の高齢者虐待対応所管課や地域包括支援センターへ通報してください。
出典
厚生労働省「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(国マニュアル)」(2025年1月22日)
e-Gov法令検索「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(2025年1月22日)
介護職と利用者さんについてよくある質問
ここでは、介護職員と利用者さんの関係について、よくある質問にお答えします。利用者さんとのコミュニケーションについて詳しく知りたい方は、チェックしてみてください。
利用者さんに優しくできない人は介護職に向いていない?
利用者さんに優しくできないことがあっても、介護職に向いていないとは限りません。むしろ、介護の仕事に真剣に向き合っているからこそ、利用者さんに分かってもらえない怒りを感じることもあるでしょう。また、疲れが溜まっているときはイライラしやすくなることも。身体介護や夜勤など、体力的な負担が大きいと感じたら、シフトの調整や休暇を相談してみると良いかもしれません。
介護職を続けるべきかお悩みの方は、「介護職に向いていない人の特徴とは?仕事の適性や悩みの対処法を解説!」の記事もご参照ください。
偉そうな利用者さんにはどう対応したらいいの?
利用者さんが高圧的な態度をとるのには、理由があるかもしれません。自宅を離れたことの寂しさや不安、制限のある生活へのストレスなどから、わがままな態度をとる利用者さんもいます。まずは、利用者さんを観察したり話を聞いてあげたりすることで、原因を探ってみるのが効果的です。また、できることとできないことを伝えたり、お話しする前に時間を設けたりすると、分かってもらえることもあるでしょう。
対処法について詳しくは、「介護職が利用者さんにキレてしまったときの対処法」でご紹介しています。
まとめ
介護職として働いていると、利用者さんとの関わり方に悩むこともあるでしょう。真剣に仕事に向き合っているからこそ、利用者さんに分かってもらえなかったとき、つい感情的になってしまうこともあるかもしれません。もし利用者さんにキレてしまったら、あまり引きずり過ぎず、対処法やこれからに活かす方法を考えることが大切です。
また、利用者さんの中には、認知症や精神疾患が原因で感情を上手くコントロールできない方や、不安・寂しさからわがままを言う方もいます。そのようなときは、利用者さんの立場になって考えてみると、コミュニケーションの糸口が見えてくるかもしれません。
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