
この記事のまとめ
- 認知症介護指導者養成研修とは、認知症介護指導者の養成を目的とした研修
- 認知症介護指導者養成研修の受講要件は、福祉系の資格や実務経験などがある
- 研修受講のメリットは、認知症介護研修の企画や地域施策に携われること
「認知症介護指導者養成研修ってどんな資格なの?」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。認知症指導者養成研修とは、認知症介護指導者を養成する研修で、取得すると認知症介護研修の企画・講師を務めることができます。この記事では、認知症介護指導者養成研修の内容や受講要件や取得のメリットをご紹介するので、スキルアップを目指す方はぜひ参考にしてください。
認知症介護指導者養成研修とは
認知症介護指導者養成研修とは、認知症研修事業の企画・立案や講師に携わる指導者の養成を目的とした研修です。研修を通して、事業所において認知症介護の質の改善について指導ができるスキルも身につけられます。認知症介護研修の受講希望者が増加していることに伴い、ニーズが増えている資格です。
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認知症介護指導者養成研修の概要
ここでは、認知症介護指導者養成研修の受講要件や学習内容をご紹介します。
認知症介護指導者養成研修の受講要件
認知症介護指導者養成研修は、都道府県が管轄し、認知症介護研究・研修センターが実施するため、都道府県によって募集要項が異なります。
厚生労働省の「介護保険最新情報Vol.1224(p.11)」の示す基準によると、認知症介護指導者養成研修の対象者は、下記の5つの要件をすべて満たす方です。
2.以下のいずれかに該当し、相当の介護実務経験がある
・介護保険施設・事業所等で働いているもしくは、過去に働いていた
・福祉系大学や養成学校等の指導的立場にある
・民間企業で認知症介護の教育に携わっている
3.認知症介護実践研修を修了しているまたは、同等のスキルがあると都道府県が認めている
4.認知症介護実践研修の企画や立案に参画するもしくは、講師として従事する予定がある
5.地域ケアを推進する役割を担う見込みがある
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認知症介護指導者養成研修の期間
認知症介護指導者養成研修の受講期間は9週間程度です。厚生労働省の「介護保険最新情報Vol.1224(p.35)」によると、認知症介護指導者養成研修の標準カリキュラムは、講義・演習112時間、職場実習5週間(25日)、他施設・事業所実習21時間で構成されます。最後に行われる修了考査を受けて合格することで、資格を取得可能です。
認知症介護指導者養成研修の学習内容
厚生労働省の「介護保険最新情報Vol.1224(p.35)」をもとに、認知症介護指導者養成研修の標準カリキュラムを下記にまとめました。
認知症介護研修総論
認知症介護研修総論は、認知症介護指導者の役割や、認知症ケアに関する施策について理解することを目的としています。
- 認知症介護実践者等養成事業の実施(1時間)
- 認知症ケアに関する施策と行政との連携(1時間)
- 研修の目標設定と研修総括(9時間)
講義に加え、「研修の目標設定と研修総括」の科目で一部演習があるものの、3科目すべてオンラインでの受講が可能です。
認知症ケアにおける教育の理論と実践
認知症ケアにおける教育の理論と実践では、認知症ケアに関する授業・研修を行う際に必要な知識や技能を学びます。
- 教育方法論(14時間)
- 授業設計法(28時間)
- 模擬授業(14時間)
- 研修企画と評価(5時間)
「模擬授業」では、作成した授業計画をもとに実際に模擬授業を行います。オンラインでの受講は一部のみ可能です。
認知症ケア対応力向上のための人材育成
認知症ケア対応力向上のための人材育成では、認知症ケアにおける人材育成や成人教育学を学んだのち、職場実習を行います。
- 人材育成論(3時間)
- 成人教育論(3時間)
- 認知症ケアに関する研究法の概論(2時間)
- 職場研修企画(14時間)
- 職場実習(5週間)
- 職場実習(振り返り)(3時間)
- 職場研修報告(14時間)
職場実習は5週間(25日)行われます。研修で学んだことを活かして企画書を作成・実践する内容です。成人教育論や職場実習はオンラインでは受講できません。
地域における認知症対応力向上の推進
地域における認知症対応力向上の推進では、認知症の方に対する地域支援の考え方などを学びます。
- 共生のために地域で支え合う体制づくり(1時間)
- 他施設・事業所実習(21時間)
「共生のために地域で支えあう体制づくり」に関してはオンラインでの受講が可能ですが、実習をオンラインで受講することはできません。
認知症介護指導者養成研修の費用
認知症介護指導者養成研修の受講費用は都道府県が負担するため、無料です。その理由は、受講のために知事などの推薦が必須となっているためと考えられます。複数の要件をクリアしなければならない分、費用を負担する必要はないのが特徴の資格です。
出典
厚生労働省「介護保険最新情報掲載ページ」(2025年2月10日)
東京都福祉局「東京都認知症介護研修の概要」(2025年2月10日)
認知症介護指導者養成研修の受講方法
東京都福祉局の「東京都認知症介護指導者について:令和6年度 東京都認知症介護指導者養成研修のお知らせ」によると、東京都における認知症介護指導者養成研修の受講方法は、次のとおりです。
申込み書類を用意する
東京都の場合、申込みには主に以下の書類が必要なため、すべてそろえて必要事項を記入しましょう。
- 受講申込書
- 受講者選抜考査のための実践事例報告に関する提出書類
- 推薦書・承諾書
- 認知症介護実践リーダー研修または認知症介護実務研修(専門課程)修了書の写し
受講申込書や推薦書・承諾書は、東京都福祉局のWebサイトの研修情報のページからダウンロードできます。保有資格や実務経験のほか、受講を希望する理由も記入が必要です。
必要書類を郵送する
必要書類がそろったら、締め切りに間に合うよう郵送しましょう。応募時期は毎年異なりますが、年に1回程度募集されます。提出先住所は、研修情報のページで確認できるでしょう。
研修を受講する
申込みが完了すると研修受講の準備は完了です。前期研修・後期研修は研修センターで行われ、職場における研修はオンラインの講義や職場での実習という形で行われます。締め切りや必要書類、受講場所は、都道府県によって異なるため、必ず受講予定の自治体に確認しましょう。
出典
東京都福祉局「東京都認知症介護指導者について」(2025年2月10日)
認知症介護指導者養成研修を受講するメリット
認知症介護指導者養成研修を修了すると、認知症ケアに関するさまざまな業務に関わることができるようになります。具体的には、次のようなメリットがあるでしょう。
認知症ケアの指導ができるようになる
認知症介護指導者は、認知症介護に関する研修を監修し、講師を務めることができます。研修を受けることで、認知症ケアに関する自身の理解が深まるのはもちろんのこと、講義を行うためのスキルも身につくでしょう。
そのため、職員として実際に介護をするだけではなく、質の高いケア方法を多くの人に広めたい・指導したいと考えている方におすすめの資格です。
活躍の場が広がる
認知症介護指導者になることで、介護職従事者として介護の現場で働くだけではなく、研修の講師や行政の活動への参加などもできるようになります。働ける場所・できる業務が増えるため、活躍の場が広がるというのも大きなメリットの一つです。
スタッフへの指導を行ったり、家族介護者から相談を受けたりと、知識を生かしたサポート業務で活躍できるようになるでしょう。
地域施策に関わることができる
資格を取得することで、地域施策に関わることができるようになるメリットもあります。認知症介護指導者は、各都道府県、市町村の委員会と連携を取り、地域の課題解決などに携わることができる存在です。そのため、介護施設だけに留まらず、行政とも関わりながら認知症ケアに関する取り組みを行えるでしょう。
転職・キャリアップに有利になる
認知症介護指導者養成研修は、専門性の高い資格のため、取得によって転職活動やキャリアアップを目指す際に有利に働く可能性があります。理由は、認知症介護指導者養成研修を受講する時点で一定の実務経験があることに加え、受講によって十分な知識を身につけていると判断されるためです。
認知症介護指導者に関してよくある質問
ここでは、認知症介護指導者に関してよくある質問に回答します。
認知症介護指導者とはどのような職業ですか?
認知症介護指導者は、認知症介護に関する指導や教育を行う職業です。認知症介護実践研修などの企画・立案や講師を務めることができます。認知症介護に対する理解を深め、良質なケアができる人材を育成するのが、認知症介護指導者の役割です。認知症介護指導者になるには、既定の受講条件を満たし、認知症介護指導者養成研修を修了することが求められます。
認知症介護指導者養成研修で給料は上がりますか?
認知症介護指導者養成研修を取得することで、必ずしも昇給などにつながるとは言い切れません。保有資格がどの程度給料に反映されるかは事業所によって異なります。ただ、認知症介護指導者養成研修は、認知症専門ケア加算の対象になっていることから考えても、需要が高い資格といえるでしょう。認知症介護指導者養成研修を修了していることで、より給料の高い職場に転職したり、職場内で評価の対象となって昇給したりする可能性は十分にあり得ます。
介護職の平均給与額や年収アップ方法について知りたい方は「介護職の給料はいくら?平均給与額や年収アップ方法、処遇改善の状況を解説」の記事もご参照ください。
まとめ
認知症介護指導者養成研修は、認知症介護指導者を養成するための研修です。修了して資格を取得すると、認知症介護実践研修の企画・立案をしたり、講師として指導したりすることができます。研修を受講するためには、既定の資格や実務経験、認知症介護実践研修の修了といった要件を満たさなければなりません。
認知症介護指導者養成研修を受講することで、認知症ケアについての理解が深まり、講義を行うことができるようになります。また、行政の活動に参加したり、地域の課題解決に携わったりなど、地域施策に関わることも可能です。研修で得たスキルがあることで、転職やキャリアアップに有利に働くメリットもあるでしょう。
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