
この記事のまとめ
- 実務者研修があれば、喀痰吸引等研修の第1号/第2号研修が一部免除される
- 喀痰吸引等研修は3種類あり、修了した研修に応じたケアを提供できる
- 実際に医療的ケアを実施するには、認定証の交付を受ける必要がある
「介護福祉士実務者研修を修了していると、喀痰吸引等研修が免除されるの?」と気になる方もいるかもしれません。実務者研修を取得済みの方は、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修の基本研修が免除されます。この記事では、実務者研修の修了者が医療的ケアを実施するための条件をまとめました。喀痰吸引等研修の修了に必要な費用と期間もご紹介します。実際に医療的ケアを実施するまでの流れも解説するので、ご一読ください。
実務者研修の資格で喀痰吸引等研修は免除される?
介護職員が喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケアを行うには、喀痰吸引等研修の修了が必要です。介護福祉士実務者研修を修了している方は、一部の基本研修が免除になります。
第1号研修/第2号研修の基本研修が免除される
実務者研修を修了していれば、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修の基本研修が免除されます。第1号研修/第2号研修の基本研修とは、高齢者や障がいのある方への医療的ケアを学ぶ研修です。50時間の講義と演習で構成されています。
実務者研修で実施される医療的ケアのカリキュラムは、第1号研修/第2号研修の基本研修と共通の内容です。そのため、実務者研修を修了していれば、第1号研修/第2号研修の基本研修を修了した扱いになります。
第3号研修は免除されない
喀痰吸引等研修の第3号研修の基本研修は、第1号研修/第2号研修と内容が異なるので、実務者研修を修了していても免除されません。
第3号研修の基本研修では、障がいのある方への医療的ケアに必要な知識を学びます。修了するには、計9時間の講義を受講することが必要です。第3号研修を修了するには、基本研修と実地研修の両方を受講しなければなりません。
第3号研修の基本研修の受講料は、1万5,000~2万5,000円程度で、受講に必要な期間はおよそ2日となっています。実地研修の受講料は5,000~1万5,000円程度で、受講期間はおよそ1~3日です。
なお、受講料のほかに、教材費や損害賠償保険への加入料など、諸経費がかかる可能性があります。基本研修と実地研修は、別で申し込む講座と、セットになっている講座があるので、自分に合った研修を選びましょう。
実地研修の受講が必要
実務者研修を修了した方が、実際に介護現場で医療的ケアに携わるためには、喀痰吸引等研修の実地研修の修了が必要です。実地研修では、医師や看護師が講師となり、利用者さんに対して医療的ケアを行います。
出典
厚生労働省「喀痰吸引等研修」(2025年2月12日)
厚生労働省「喀痰吸引等制度について」(2025年2月12日)
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喀痰吸引等研修の実地研修の種類
介護福祉士実務者研修を取得している方は、修了した実地研修の種類に応じた医療的ケアを提供できます。以下で、第1号研修・第2号研修・第3号研修の違いをまとめました。
第1号研修
第1号研修では、介護職員が行える医療的ケアを網羅します。実地研修の内容は、以下のとおりです。
- 口腔内の喀痰吸引:10回以上
- 鼻腔内の喀痰吸引:20回以上
- 気管カニューレ内の喀痰吸引:20回以上
- 胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養:20回以上
- 経鼻経管栄養:20回以上
「気管カニューレ内の喀痰吸引」や「経鼻経管栄養」を行う必要がある場合は、第1号研修を受講しましょう。
第2号研修
第2号研修の実地研修の内容は、以下のとおりです。
- 口腔内の喀痰吸引:10回以上
- 鼻腔内の喀痰吸引:20回以上
- 胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養:20回以上
第2号研修は、第1号研修で実施される「気管カニューレ内の喀痰吸引」と「経鼻経管栄養」には対応していません。
第1号研修・第2号研修の実地研修の受講料は、研修の実施機関によって異なり、それぞれ2万~8万円程度です。基本研修と実地研修の両方を受講する場合、15万~20万円程度かかります。実務者研修を修了している方は基本研修が免除になるため、その分の費用を抑えられるでしょう。
第1号研修・第2号研修の実地研修は、5日間程度の研修を1ヶ月ほどかけて実施する場合が多いようです。自施設か外部機関かによって、必要な費用や期間は異なるので、事前にしっかりとリサーチしておきましょう。
第3号研修
厚生労働省の「喀痰吸引等研修~研修課程(2)~」によると、第3号研修の実地研修を修了する条件は次のとおりです。
医師等の評価において、受講者が習得すべき知識及び技能を修得したと認められるまで実施
引用:厚生労働省「喀痰吸引等研修~研修課程(2)~」
第1号研修・第2号研修とは異なり、第3号研修は評価する項目や実施回数が具体的に決まっていません。第3号研修は、ALSなどの重度障がいのある方といった特定の利用者さんに対し、決まった医療的ケアのみを行うための研修です。そのため、必要な項目をスキルが身につくまで実施することが修了の条件となっています。
出典
厚生労働省「喀痰吸引等研修」(2025年2月12日)
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実務者研修を修了して医療的ケアを実施するまでの流れ
介護福祉士実地研修を修了すると、「認定特定行為業務従事者認定証」が交付されます。認定証を保有する方が、登録特定行為事業者に就業すれば、医師の指示に基づいて利用者さんに医療的ケアを提供することが可能です。
実務者研修を修了して医療的ケアを実施するまでの詳しい流れを、以下にまとめました。
喀痰吸引等研修の実地研修を受講する
実務者研修を修了した方が医療的ケアを実施するには、登録特定行為事業者もしくは登録研修機関で実地研修を修了しなければなりません。勤務先の事業所のほか、外部の事業所で実地研修を受講できることもあります。実地研修を外部機関で受講する場合、勤務先の事業所長からの推薦が必要な可能性があるので、事前に確認しておきましょう。
「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受ける
実地研修を修了したら、都道府県知事の発行する「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けます。
介護福祉士の資格を取得している方は、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの「「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の登録申請について」から申請することで、介護福祉士の登録証に喀痰吸引等行為を記載できるようです。
詳しくは、「介護福祉士登録証に喀痰吸引等を記載するには?試験合格後の手続きの流れ」の記事をご一読ください。
出典
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の登録申請について」(2025年2月12日)
登録特定行為事業者に就業する
介護職員が医療的ケアを実施できるのは、「登録特定行為事業者」として都道府県知事に登録した事業所のみです。勤務先が登録特定行為事業者の登録を受けていない場合、申請して登録を受けないと、介護職員が医療的ケアに携わることはできません。
基本的に、登録特定行為事業者として登録できるのは、介護関係の施設や障害者支援施設、在宅介護を提供する事業所です。
出典
厚生労働省「喀痰吸引等制度について」(2025年2月12日)
医師の指示に従って喀痰吸引や経管栄養の処置を行う
介護職員が医療的ケアを行う際は、必ず指示書などを確認し、医師の指示に基づいて行わなければなりません。利用者さんの様子がいつもと異なるときは、速やかに医師や看護師に報告し、医療職と連携することが大切です。
喀痰吸引等研修の資格で実務者研修が一部免除される
前述したように、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修基本研修と、介護福祉士実務者研修の医療的ケアは、学習内容が共通です。そのため、喀痰吸引等研修で第1号研修/第2号研修の基本研修を修了した方は、実務者研修の医療的ケアの科目の受講が免除されます。
また、看護師または准看護師の資格がある方が実務者研修を受講する場合も、看護技術が身についているため、医療的ケアの科目が免除されるようです。
実務者研修の科目免除について詳しく知りたい方は、「介護福祉士実務者研修の受講が免除になる資格は?費用が安くなる制度も紹介」の記事をチェックしてみてください。
出典
厚生労働省「介護福祉士養成施設等における「医療的ケアの教育及び実務者研修関係」」(2025年2月12日)
厚生労働省「実務者研修に係る Q&A 集の一部修正について」(2025年2月12日)
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実務者研修の喀痰吸引等研修の免除についてよくある質問
ここでは、実務者研修の喀痰吸引等研修の免除についてよくある質問にお答えします。「実務者研修を修了していれば、利用者さんの喀痰吸引ができるの?」と気になっている介護職員の方は、ぜひチェックしてみてください。
実務者研修で免除されるのは喀痰吸引等研修の何号?
実務者研修の修了者が免除されるのは、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修の基本研修です。第1号研修/第2号研修の修了が必要な業務に携わる場合、追加で実地研修のみを修了すれば、認定特定行為業務従事者として都道府県に登録できます。なお、喀痰吸引等研修の3号研修の基本研修は、実務者研修を修了していても免除されません。業務に必要な場合は、基本研修と実地研修を両方受講しましょう。
詳しくは、この記事の「実務者研修の資格で喀痰吸引等研修は免除される?」をご覧ください。
喀痰吸引等研修の実地研修のみの費用はどれくらい?
喀痰吸引等研修の第1号研修・第2号研修の実地研修の受講料は、それぞれ2万~8万円程度です。また、第3号研修の実地研修の受講料は、5,000~1万5,000円程度。実務者研修を修了していても、第3号研修の基本研修は受講しなければなりません。第3号研修の基本研修の受講料は、1万5,000~2万5,000円程度です。
なお、自治体や民間企業など、実施機関によって費用は異なります。職場で受講する場合は費用負担が少ない可能性があるので、受講前に確認しておきましょう。
喀痰吸引等研修の実地研修はどこの施設で受けますか?
自身の働く事業所が「登録特定行為事業者」であれば、喀痰吸引等研修の実地研修を職場で受講できます。勤務先の事業所が「登録特定行為事業者」でない場合は、外部の登録研修機関である介護事業所や医療施設などで受講することになるでしょう。どこで受講できるのか、どの研修を受講すれば良いのかが分からない場合は、都道府県に問い合わせる必要があります。上司がいる場合は、まずは職場に確認してみましょう。
出典
厚生労働省「喀痰吸引等制度について」(2025年2月12日)
まとめ
介護福祉士実務者研修の医療的ケアのカリキュラムは、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修の基本研修と共通の内容です。そのため、実務者研修を修了していれば、喀痰吸引等研修の第1号研修/第2号研修の基本研修が免除になります。
なお、喀痰吸引等研修の第3号研修の基本研修は、実務者研修を修了していても免除されません。第3号研修の修了が必要な場合は、基本研修と実地研修を両方受講しましょう。
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