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この記事のまとめ
- 行動援護とは、障がいにより1人での移動が困難な方の外出を助けるサービス
- 行動援護従業者の仕事内容は、予防的対応や制御的対応など
- 行動援護に従事するには、行動援護従業者養成研修の修了などが必要
「行動援護では何をするの?」と気になる方もいるかもしれません。行動援護とは、知的障がいや精神障がいがあり、1人での移動が困難な方の外出を手助けする障害福祉サービスです。行動援護従業者が利用者さんの外出に同行し、移動や外出先での行動をサポートします。この記事では、行動援護の概要や対象者を解説。行動援護従業者の仕事内容や必要な資格もまとめたので、障がい者支援に興味がある方は参考にしてみてください。
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行動援護とは、知的障がいもしくは精神障がいがあり、1人で行動することが困難な方に対し、外出の手助けを行う福祉サービスです。行動援護に従事する職員は、「行動援護従業者」と呼ばれます。
知的障がいや精神障がいがある方は、外出先でのコミュニケーションや臨機応変な対応が難しい傾向にあり、場合によっては不安からパニックを起こしてしまうことも。行動援護では、外出することにさまざまな困難を抱える利用者さんが安心して外出できるよう、「移動時や外出先での危険を回避するための援護」や「移動時や外出先で必要な介護」などを行います。
行動援護の対象者
行動援護は、知的障がいや精神障がいの特性により行動に困難があり、常時介護が必要な方を対象としています。厚生労働省の「障害福祉サービスについて」によると、具体的な利用条件は以下のとおりです。
- 障害支援区分が区分3以上である
- 障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目(12項目)の合計点数が10点以上である(児童の場合は、相当する支援の度合いである)
行動援護を利用できるのは、障害支援区分や認定調査の行動関連項目の条件を満たし、支援の必要性があると判断された方です。障害支援区分とは、必要とされる支援の度合いを数値化したもの。区分1~区分6まであり、数が大きいほど日常生活に困難が多いとされています。
行動関連項目とは、障害支援区分認定に用いられる調査項目の一つです。「コミュニケーション能力」や「説明理解能力」「大声・奇声を出すか」「異食行動はあるか」などの12項目が記載されており、行動障がいの発生する頻度や支援の必要度に応じて点数を付けます。合計点数が高いほど、支援の必要性も高いと判断することが可能です。
移動支援と同行援護との違い
障がいがある方の外出を手助けする福祉サービスは、行動援護のほかに「移動支援」と「同行援護」があります。これらのサービスの主な違いは、対象者やサービス内容、管轄です。下記では、それぞれの違いを表にまとめました。
サービス名 | 管轄 | 対象者 | 支援内容 |
行動援護 | 国 | 知的障がいがある方と精神障がいがある方 | 移動や外出先において、危険を回避するための援護や介護を行う |
移動支援 | 市区町村 | 障がいがある方で、市区町村から支援が必要と認められた方 | 移動に必要な援護や介護を行う。支援範囲や負担費用は、自治体によって異なる |
同行援護 | 国 | 視覚障がいがある方 | 移動時や外出先での必要な情報提供や移動の援助を行う。必要に応じて、代筆や代読を行うこともある |
行動援護や同行援護の管轄は国で、基本的に地域によって受けられるサービスや費用に差はありません。一方で、移動支援の管轄は市区町村で、自治体によって受けられるサービスや利用時間などが異なります。
出典
厚生労働省「障害福祉サービスについて」(2025年3月19日)
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行動援護従業者の仕事内容
行動援護従業者は、知的障がいや精神障がいがある方が、安心かつ安全に外出できるように支援します。とはいえ、制限なく支援できるわけではありません。ここでは、行動援護従業者の仕事内容を、「対応できること」と「対応できないこと」に分けて説明します。
行動援護で対応できること
先述のとおり、行動援護では「移動時や外出先での危険を回避するための援護」や「移動時や外出先で必要な介護」を行います。具体的には、「予防的対応」「制御的対応」「身体介護的対応」が仕事内容です。下記で一つずつ解説します。
予防的対応
行動援護における「予防的対応」とは、自傷行為や他害行為、暴言などといった行動障がいが起きないように回避するための支援を指します。
たとえば、「新しい場所に不安を感じる方に、あらかじめ目的地までの予定や行動を伝えておく」「大きな音が苦手な方には、大きな音がする場所を避けたルートで移動する」などです。行動援護従業者は、利用者さんが行動障がいを起こしやすい状況を把握したうえで、一人ひとりに合わせた対策を行います。
制御的対応
制御的対応とは、移動時や外出先で行動障がいが起きた際に、利用者さんやや周囲の人の安全を確保したうえで、適切な対応を行うことです。予防的対応を行っても、行動障がいが起こることは珍しくはありません。行動援護の支援中に行動障がいが起こったら、静かな場所に移動したり冷静にコミュニケーションを取ったりして、利用者さんが落ち着けるよう支援します。
身体介護的対応
移動時や外出先での排泄介助や食事介助も、行動援護従業者の仕事です。利用者さんのなかには、尿意や便意を認識できない方や、トイレに行くことに困難がある方もいます。移動時や外出先においても、トイレ介助やオムツ交換など、利用者さんの特性に合わせた支援が必要です。ほかにも、ご自身で着替えるのが難しい方には更衣介助を行うなど、外出準備をサポートすることもあります。
行動援護で対応できないこと
行動援護は、通学や通勤などの「通年かつ長期にわたる外出」やギャンブルなどの「社会通念上、不適当な外出」には対応できません。また、利用者さんのご家族など、ご本人以外へのサービスの提供も行えないので注意しましょう。
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行動援護従業者が働く職場
行動援護従業者が活躍するのは、以下のような職場です。
- 行動援護事業所
- 障害者支援施設
- 障害者グループホーム
- 就労移行支援事業所
- 訪問介護事業所
- 児童発達支援事業所
- 放課後等デイサービス
行動援護従事者は、行動援護事業所をはじめとする障害福祉サービス事業所で働いています。行動援護サービスは、居宅介護や重度訪問介護、訪問介護を提供する事業所が提供している場合が多いので、行動援護に携わりたい場合は訪問系の事業所を調べてみると良いでしょう。
なお、行動援護従業者として働くには資格や実務経験が必要です。行動援護従業者の資格要件については、この記事の「行動援護従業者になるのに必要な資格」で解説します。
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行動援護従業者の平均給料
行動援護従業者のみの給与データはありませんが、行動援護従業者が活躍するサービスにおける福祉・介護職員の平均給与を紹介します。
厚生労働省の「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要(p.18)」を参考に、福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算を取得している事業所で働く福祉・介護職員(常勤勤務)の平均給与額を以下にまとめました。
サービス名 | 平均給与(常勤の者) |
施設入所支援 | 365,750円 |
共同生活援助(介護サービス包括型) | 280,560円 |
就労継続支援A型 | 264,520円 |
就労継続支援B型 | 285,970円 |
児童発達支援 | 281,740円 |
放課後等デイサービス | 262,090円 |
参考:厚生労働省「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果の概要(p.18)」
上記のなかで、福祉・介護職員の平均給与が最も高いのは、施設入所支援の365,750円です。続いて、就労継続支援B型が285,970円でした。なお、給料は地域や業務内容、保有資格によって異なるので、転職の際は十分に調べるようにしましょう。
行動援護従業者として働いた場合の給料が気になる方は、介護・福祉業界の求人に特化した「レバウェル介護(旧 きらケア)」にご相談ください。「転職するか分からない」「転職を迷っている」という段階でも、ご相談いただけます。
出典
厚生労働省「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」(2025年3月19日)
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行動援護従業者になるのに必要な資格
行動援護従業者として働くには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 「行動援護従業者養成研修」または「強度行動障害支援者養成研修(実践研修)」の修了
- 知的障がいや精神障がいがある方への直接処遇経験1年以上
行動援護従業者として働くには、「行動援護従業者養成研修」などの資格と1年以上の実務経験が必要が求められます。「行動援護従業者養成研修」とは、行動援護に必要な専門知識や技術を学べる研修です。基本的に修了試験はなく、カリキュラムを履修することで資格を取得できます。
行動援護従業者養成研修に興味のある方は、「行動援護従業者養成研修とは?受講要件やカリキュラム、メリットなどを解説」を参考にしてみてください。強度行動障害支援者養成研修については、「強度行動障害支援者養成研修とは?資格の概要や取り方、メリットを解説」で説明しています。
行動援護に関するよくある質問
ここでは、行動援護に関するよくある質問を紹介します。行動援護従業者に興味のある方は、チェックしてみてください。
行動援護従業者に向いている人の特徴は?
行動援護従業者に向いている人の特徴は、「臨機応変な対応ができる」「相手の気持ちを考えられる」「方向感覚が良い」などです。行動援護では、利用者さん一人ひとりの個性に合わせた対応が求められたり、想定外のことが起きたりします。イレギュラー対応が求められる傾向にあるため、臨機応変な対応ができる人は行動援護に向いているでしょう。また、相手の気持ちを考えて行動できる人は、利用者さんと信頼関係を築けます。方向感覚の良さも、行動援護に役立つでしょう。行動援護に興味のある方は、「行動援護従業者の仕事内容」も参考にしてみてください。
行動援護従業者が運転する車での移動は可能?
以前は、一定の条件を満たさなければ、行動援護従業者が運転する車での移動はできませんでした。しかし、2024年に要件が緩和され、現在は行動援護従事者が運転する車での移動は可能です(2025年3月時点)。ただし、運転中は援護や介護が行えないという理由から、行動援護従業者の運転中は、報酬の算定の対象外。ガソリン代や駐車場代、高速料金など、自動車を利用すること以外で発生する料金などの請求はできません。また、乗車中の支援が必要な場合、行動援護従事者1人での対応は不可能です。このような事情から、事業所によっては車の運転を不可としていることがあるため、行動援護で自動車を利用したいときは事業所への相談が必要です。
まとめ
行動援護とは、知的障がいや精神障がいがあり、1人での移動が困難な方を対象に、外出を手助けする福祉サービスです。行動援護では、利用者さんの状況に合わせて、「予防的対応」や「制御的対応」「身体介護的対応」を行います。
行動援護に従事するには、「行動援護従業者養成研修課程または強度行動障害支援者養成研修(実践研修)修了」と、「1年以上の知的障がいや精神障がいがある方の直接支援業務に従事した経験」が求められます。資格を取得しただけでは、行動援護に携われないので注意しましょう。
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